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忘却葬送曲
fifth movement 2

「・・・無事だったか、真琴。不死身っていうのは本当の話だったんだな」

「正志こそ、よく無事で・・・透夜も大丈夫みたいだね。本当に良かった・・・」

今は跡形もなく破壊された小学校の、校舎の裏。
昨晩透夜が言っていた洞窟の中に、僕の希望的観測通りに二人はいた。

「家に、あれの試作機を一台置いていたんだ。・・・まさか、こういう形で役に立つとは思わなかったな。小さなシールドを張って、なんとか身を守っていた」

正志に寄り添うように座っている透夜は、静かな寝息を立てていた。
彼らの側に近づいて行くと、暗くて見えなかったある事実に僕は息を飲んだ。

「正志、その怪我は・・・」

「あの機械、途中で壊れて・・・俺はもう、ここからは動けないだろうな」

彼の血で黒ずんだTシャツは、流れ出た出血の多さを示していた。早く治療を受けないと、彼の命は危ない。
でも、彼を助けてくれる病院はない。少なくとも、この島にはもう・・・。
僕の心を、酷く冷たい絶望感が徐々に覆い始める。

「・・・真琴、そう悲しそうな顔をするなよ。いつものように、微笑んでいてくれ」

「無理だよ・・・もう喋らないで、傷に響いてしまうから・・・」

「じゃあお前が笑うまで、俺はしゃべり続けるぞ。最期に見るお前の顔がそんなんじゃ、安心して逝けないからな」

「もう、そんなことを言わないでよ・・・余計に辛くなるから」

痛みに顔を歪めながら、それでも笑顔を作ろうとする彼に、僕も弱々しい微笑みを返した。

「俺達以外に、生存者はいるかな・・・」

「・・・ここまで来る途中で見た限り、厳しいかもしれない」

「そうか・・・」

正志の隣に座った僕は答えた。時々苦しそうに息を吐きつつ、彼は話し続ける。

「喉、乾いたな・・・メロンソーダが飲みたい。でも財布、家に忘れたな・・・」

「・・・それ以前に、自動販売機は焼けちゃっていると思うよ」

「ああ・・・俺のささやかな幸せが」

いつもの調子で話し続ける彼の声は、徐々に小さく、途切れがちになっていく。
この世界に繋ぎ止めようとするかのように、僕は彼の手を強く握っていた。


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