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忘却葬送曲
Fourth Movement 9

ザー・・・ザー・・・

夜の海は、潮の香りを強く感じる。
闇に包まれ、水平線すらわからない海は、昼間と変わらず満ち引きを繰り返している。

二人が寝静まった頃、僕は家から抜け出して海岸へ来ていた。
街灯が少ない道はとても暗く、ここまで来るのは大変だったけれど、・・・それでも、自分の気持ちを落ち着けるためにここへ来たかった。

「・・・何度経験したって、慣れることはないんだね。人と別れることは・・・」

きっと明日が、正志と過ごせる最後の日になる。
そのどうしようもない事実が、僕の胸を締め付けた。・・・苦しくて仕方ない。

いっそ記憶を消し去って、何もかもなかったことにしてしまえば、彼が捕まることはないだろう。
でも、そんなことを彼は望んでいない・・・僕が望んでいたとしても。

僕がこんな状態だったら、きっと透夜に僕らの計画を勘付かれてしまうだろう。
・・・しっかりしなければ。これからは僕が透夜を、正志の代わりに守っていくのだから。

僕は立ち上がり、服についた砂を払う。

暗い海に背を向け、離れようとした・・・その時だった。

ドーン・・・!

夜の静寂を切り裂く轟音と地響きと共に、赤い炎が上がったのは。


第四楽章 終

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