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忘却葬送曲
Fourth Movement 6

「俺や静香、ここの研究所にいる人間は全員、この島に来る前は軍の兵器開発に携わっていた。整った設備に豊かな資金、・・・この時代の最先端の研究をしたいなら、あそこは最適だ」

研究所から出て、再び長い一本道を僕達は歩いていた。すっかり日は暮れて、太陽は地平線に沈み込んでしまった。

「戦争に勝つためには、新しい物、新しい技術を生み出していくしかないですからね」

「ああ。・・・俺は自由に開発研究出来る環境で、次々と湧き上がるアイデアを形にしていった。色んな兵器を作ったさ、・・・一瞬で沢山の人間の命を奪ってしまえるような物を、俺自身の意思で。だが、あいつが自身の命と引き換えに透夜を産んで、俺は思ったんだ」

突然足を止めた正志は、自分の両手のひらをじっと見つめた。

「俺は、生まれて来たこの命のために一体何ができるんだろうか。・・・そして気づいた、俺はあいつの未来を奪いかねない恐ろしいものを沢山、この世界に生み出してしまったと」

「・・・その兵器をこの世界から消し去るために、君はあの機械を作ったんだね」

「そういうことだ。別に、俺が生み出した兵器が無くなったからって、他の誰かがもっと素晴らしい兵器を作り出すだろうさ。・・・だが、俺が作った兵器が透夜を傷つけるようなことがあったら、天国にいるあいつに顔向けできないからな」

僕達が見上げている空は、徐々に藍色に染まっていった。目に見える星が一つ、二つと増えていく。
夜はもうすぐそこまでやって来ていた。

「透夜がこれから生きていくこの世界を、少しだけ・・・ほんの僅かでもいい場所に出来たら、俺は立派な父親になれると思うか?」

「・・・はい。さあ、早く帰りましょう。透夜が首を長くして待っていると思いますよ」

「ああ。今日はカレーを作る約束をしているからな。急ぐか・・・走るぞ!」

急に走り始めた彼に驚いていた僕も、追いかけるように走り始める。

やっぱり正志は子供っぽいなと思いつつ、・・・そんな彼を追う僕もまた、きっと同じくらい子供のように見えたはずだ。


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あきゅろす。
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