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忘却葬送曲
Third Movement 6

「じゃあ俺はこれで。近江さんによろしく、またね」

「はい、また今度」

これから通う高校のことや今読んでいる本などについて長話したあと、新島先輩と俺は手を振って別れた。

学校での知り合いが出来たことは本当に嬉しい。
・・・今はまだ言えなかったけれど、俺の記憶喪失のことも彼になら話せそうな気がする。
ホクホクと顔を緩ませた俺は、図書館の中へと戻っていった。

再びお気に入りのソファーに体を沈めた俺は、先程の小説の続きを読み始めた。

それは主人公が、自身が死んでしまったという事実すら忘れ、過去の時間を繰り返す街で生き続けるという話だった。

自分がどこへ行けばいいのかわからない彼は、何度も、何度も、冷たい闇に飲み込まれ、再び同じ場所、同じ時間で一人目を覚ました。

その出口の見えない物語が終わりを迎えたのは、ほんの些細なことがきっかけだった。
彼は思い出したのだ、自分の最愛の人を。
そこから生まれた喜びと、痛みを。

―・・・そうか。俺はもう、あなたを抱きしめることは出来ないんだな・・・―

涙をこぼし、静かに微笑み、彼の魂はその世界から旅立っていった。


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あきゅろす。
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