忘却葬送曲
Third Movement 4
「お仕事お疲れ様です、近江さん」
「お待たせ、それじゃお弁当食べようか」
図書館の中庭にあるベンチへと座った俺達は、朝近江さんが作ってくれたサンドウィッチの包みを開いた。
半分以上がたまごサンドであるその中身を見て、俺は笑みをこぼした。
「ふふ、本当に近江さんはたまごサンドが好きですね」
「コレステロールはちょっと気になるけど、・・・このふわふわな食感がたまらないからね」
「そうですね、僕も好きです」
サンドウィッチの柔らかな食感を楽しみつつ、よく晴れ渡っている空を見上げた。
飛行機雲が一筋、青いキャンパスに白線を引くように浮かんでいる。
どこか惹かれるその光景に俺が微笑んでいる隣で、彼がそっとつぶやくように言った。
「・・・軍の偵察機かな・・・」
「・・・近江さん?」
その低い声を発した彼の横顔は・・・酷く胸が締め付けられる、悲しげな表情をしている。
俺の視線に気がついた彼は、元の優しい笑みを浮かべた。
「ごめん、ぼんやりしていた。・・・ふふ、口の端にたまごが付いているよ、透夜」
「うわっ、自分で取れますから、大丈夫です!」
俺の口元に伸ばそうとした彼の手を制し、俺は自分の手でこすってそれを落とした。
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