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忘却葬送曲
prelude 4

放課後、帰宅部である俺は、真っ直ぐ帰るのでもなく、ブラブラと繁華街を歩いていた。
楽しげに行き交う人々の声をシャットダウンするように、耳にはイヤホンをつけ、好きな音楽を聴きながら人ごみの中を進む。

目的の場所である、通い慣れた本屋へと入り、文庫本が並ぶコーナーへと真っ直ぐ向かった。特に目当てのものがあるわけでもなく、目に付いたものを適当に選んで立ち読みする。

・・・誰かに、見られている感覚があった。
視線をこっそりと持っている本から外せば、高そうなスーツを着た男が、鋭い目でこちらの様子を伺っている。
嫌な胸騒ぎがして、俺はさっさとその場から離れ、店を出た。

昔から、俺を見張っているような視線を感じることは時々あった。・・・多方、その理由はわかっている。だからこそ、俺は優秀で真面目な生徒を演じてきたわけだが。
その男の追跡を躱すように、いつもとは別ルートの道をただひたすらに歩いた。



いつの間にか、俺は見たことのない狭い路地に来てしまっていた。
治安が悪そうな怪しげな雰囲気に、流石に俺は足を止め、来た道を引き返そうとした・・・その瞬間、後方から勢い良く走ってきた人物が俺にぶつかり、俺を含めて二人共、硬いコンクリートの地面に倒れこんだ。

ぶつかった痛みをこらえつつ周囲を見渡せば、ラフな格好をしたガラの悪そうな男と、彼が持っていたらしいボストンバックが俺と同様、地面に転がっている。

向こうの方に非があれど、倒れたままの男に手を貸そうと、俺は立ち上がって彼に近づいた。

「あの、大丈夫ですか?」

「あっ、ああ。・・・お前、悪いけどその荷物、預かってくれないか?」

男は打ち付けたらしい腰を抑えながら、無造作に落ちたままのバッグを指し示した。

「はぁ・・・?」

「俺急いでいるから、・・・頼んだぜ」

勢い良く立ち上がると男は再び走り出し、あっという間に姿が見えなくなった。俺は呆然とその後ろ姿を見送り、その視線を残されたボストンバッグへと移す。

「頼んだと言われても・・・、連絡先くらい、教えていけよ・・・」

とりあえず俺はその放置されたものを掴んだ。男が消えた方向を所在無げに見つめていると、・・・その方向とは逆の方から複数の足音が近づいてきた。

酷く嫌な予感がしたが、荷物から手を離す間も無く、走ってきた彼らがそこに到着した。

先ほど本屋で見かけた男と似た雰囲気を持つ、スーツを着た集団。
彼らはボストンバッグ、それを持っている俺を両方見た後、内ポケットから黒い手帳を取り出した。
それを見た瞬間、俺の体が緊張でこわばる。

「警察だ。・・・署までご同行願う。そこで、詳しい経緯を話してもらおう」

ああ、今日はなんて厄日だ・・・!

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