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忘却葬送曲
Second Movement 10

その場にある棚を全て塵に変え、降り注いでくる大量の本でその場を混乱させた上、軍から全ての武力を奪った彼は、持っていた銃を彼らに向かって闇雲に発砲した。
それに当たってしまった人間が、次々に呻きながら倒れていく。

少年は狂ったように叫び声を上げ、血走った目をして引き金を引き続けた。


俺はその血生臭い光景を呆然と眺めていた。
憎しみの連鎖、それが生み出した新しい悲劇を。

少年が撃った銃弾で誰かが死んでしまったら、その死を嘆く誰かが、またこの悲劇を繰り返すのだろうか。
・・・ならば、彼にこれ以上撃たせてはいけない。

憎しみが連鎖するというならば、もっと幸福な何かが繋がったっていいだろうが・・・!

無我夢中で中原がいるホールの中心まで走り込んだ俺は、彼の身体を突き飛ばした。

武器を手放した身体に馬乗りになり、俺の拘束を解こうともがき続けている彼に大声で語りかける。

「こんなことをするのが、あいつのためになると思うのか!・・・能天気で優しい人間だっただろう、近江は・・・。お前はあいつの人生の結末を、ただの悲劇にしたいのか?・・・そうじゃないだろう。あいつが生きた理由を、お前がもっと幸福なものに変えてみせろよ、中原!」

動きを止め、黙って俺を見上げている彼の目からは、静かに涙が流れ出していた。


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あきゅろす。
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