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忘却葬送曲
Second Movement 4

「ここにはどこでも読めない本が沢山眠っていると聞きまして。どうしても見てみたくて、こっそり入り込んだんです。本を読んでいたら急に灯りが消えてしまって、困って立ち往生していました。永井さんが来てくださって本当に助かりました」

「礼はいらない。・・・しかしまあ、こんな地下深くまで入ってこられたな」

「書籍マニアの間で、いくつか出入りできるルートが知られているんです」

灯りを持っていない男を仕方なく保護した俺は、彼とともに暗い廊下をずっと進んでいた。
床に無造作に散らばっている本が行く手を何度も遮る。俺は一応それらを踏まないように進んだ。

「貴重な本がこんなふうに粗雑に扱われているなんて・・・今日初めて来ましたが、とても悲しい気持ちになりました」

立ち止まった男は、落ちていた一冊の本を拾い上げ、付いていた埃を払った。

「かわいそうなぞう。・・・昔呼んだ絵本です。どうしてこんな場所に来てしまったのかな」

「・・・この国は戦争に否定的なものは、徹底的に排除したからな。戦場で必死に戦っている兵士達に、失礼だとさ」

持っていた絵本を近くの棚に丁寧にしまった男は、俺にその質問を投げかけた。

「あなたはこの国・・・いや、この世界をどう思っていますか」

俺の見開かれた双眸に、どこか悲しげで・・・またどこか優しげな、彼の顔が映り込む。

「あなたは、この世界が好きですか?」


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