忘却葬送曲
Second Movement 3
いくつかのグループに分かれてその地下図書館に潜入した俺達は、あらかじめ犯人が仕掛けておいたらしい、いくつものトラップに阻まれてその連係を失ってしまった。
こうして俺も孤立状態に陥ってしまっている。
持っていた無線は、ある地点を通過した時に中の回路が塵になってしまったらしい。
どうやったのかは犯人のみぞ知ることだが、困ったもんだ。
「連絡もお互いに取れない上に、この暗闇か。・・・相打ちにならないよう、気を付けないとな」
電気系統が全て犯人に破壊された地下内は、足元の非常照明の僅かな灯りと、自分が持っていた小さい懐中電灯だけが頼りだ。
・・・あの少年は人をむやみに殺したりしないだろうが、万が一のこともある。
十分に警戒しつつ、ゆっくりとこの暗い通路を進む他ない。
・・・カタン。
前方からした僅かな音に、俺は持っていた銃を構えた。
「誰だ、・・・こっちに出てこい」
俺の鋭い声に反応した相手が、暗がりの中からゆっくりと近づいて来る。
緊張感のない表情をしている、優男だった。
チェック柄の半袖シャツにジーンズ、足にはサンダルを履いている。・・・あまりにも無防備なその姿に、俺は向けていた銃口を下げた。
男は首をかしげて俺をじっと見ている。
「何者だ、お前は。・・・ここは政府関係者以外立ち入り禁止の、禁書保管庫だが?」
「ああ、えっとその・・・ただの、本好きです」
あまりに場違いな答え、そして男の能天気な笑みに、俺は本日二回目の大きな溜め息をついた。
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