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忘却葬送曲
First Movement 10

「答えは出たかい?・・・新島君」

そのまま水野の墓の前へと来た俺は、月明かりの下で、再び彼と出会った。

近江さんの問いかけに、俺は迷うことなく自分の気持ちを語り始める。

「水野のことを思い出すと、胸が張り裂けそうなほど、苦しい。彼がもういないことが悲しくて、彼の思いに答えられなかったことが悔しくて、死にたいほど辛い・・・!
でも、この思いを一生背負って、俺は生きていく。それが、死んでしまった彼のために俺が出来る唯一のことだから」

「それで、君は前に進める?・・・彼が残した何もかもを背負って、歩き続けられるかい?」

俺は涙を袖でぬぐい、彼を真っ直ぐに見つめ返した。

「水野が、・・・亮が俺にくれたのは、絶望だけじゃない。他にも、数え切れないほど沢山の素晴らしいものを、思い出を、彼は与えてくれた。俺が背負うのは、悲しみや苦しみだけじゃない。・・・この痛みさえ、彼がくれたものだと思えば、俺は恐れずに全て抱きしめて、生きていける。・・・だから、彼のことを、俺は絶対に忘れたりはしないよ、近江さん」

そう笑顔で答えてみせた俺に、近江さんも微笑み返し、俺に一枚のカードを手渡す。

「これは、水野君の貸出記録のカード。・・・この彼が選んだ本を読んでいけば、彼が君に何を望んでいるのか、見えるはずだから。・・・今の君なら、きっとわかるよ」


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あきゅろす。
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