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忘却葬送曲
First Movement 5

「ずっと前から、お前のことが好きだった。・・・俺と、付き合ってくれないか、新島」

彼からその衝撃的な告白をされたのは、三年の一学期が始まってまだ間もない頃。
同じ生徒会の、2年の後期から一緒にずっと働いてきた仲間だった。

彼を会計として、生徒会に誘ったのは俺だった。
俺よりも背が高く、肩幅もあるがっしりとした身体。運動神経も良くて、そのくせ頭もいい。

人あたりが良くて沢山の後輩から慕われている、学校に一人はいるような人気者だった。

俺も、彼に憧れている大勢の人間の内の一人で、上手い理由をつけて、彼を生徒会に引き込んだのだ。

別のクラスであまり話す機会のなかった彼と、少しだけでも仲良くなれたらいい、そう思っていた。
・・・だがまさか、友人という枠を超えて、彼に告白されるなど、誰が思いもしようか。

彼の突然の告白にすっかり動揺した俺は、よく考えもせず、世間の常識を盾にして逃げてしまった。

「・・・俺は男だから、お前とは付き合えない。・・・すまない、水野」

「・・・そうか。引き止めて、悪かった。・・・俺が言ったことは忘れてくれ」

生徒会室のドアが静かに閉められ、彼の足音が遠ざかる。

ひとり部屋の中に残された俺は、しばらく呆然と立ち尽くしていた。




「忘れろ」と言われたって、どうしても俺には忘れられなかった。

水野は、本気だった。そのくらい、彼の目を見れば簡単に分かる事だった。

同性の相手に告白するなんて、相当覚悟をしなければ出来ないはずなのに。

そんな彼の真剣な思いを、俺はちゃんと向き合ってやらずに、ただ振り払ってしまった。

これで、俺は本当に良かったのか。
あいつのことを俺はどう思っているんだ・・・どうしたいんだ。

(明日の会議で、彼とどんな顔をして会えばいいのだろう・・・)

家に帰った俺は、勉強にも手がつかず、悶々とその事を考え続けた。


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