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忘却葬送曲
First Movement 2

「新島、お前さっき2−Aの田辺の告白、振っただろう。勿体無いことをする」

副会長の藤堂と共に、蒸し暑い生徒会室で一学期の活動報告書をまとめていると、黙々と作業していた彼が手を止め、突然その話を持ち出した。

俺もまた動かしていたボールペンを置き、机の向かい側に座る彼に答える。

「・・・勿体無いかどうかの話ではないだろう。大体にして、もうすぐ俺達は受験勉強で忙しくなる。恋愛なんてしている暇はない」

「まあそうだが。首席で生徒会長のお前なら、いくらでも推薦をもらえるだろ。・・・少し肩の力を抜くために、付き合ってみてもいいんじゃないのか、新島」

ふざけるような笑みを引っ込めた藤堂が、真剣な眼差しで俺に語りかける。

「そんな軽い気持ちで付き合い始めても、お互いを不幸にするだけだ。・・・気を遣わせて悪い、藤堂。・・・俺は、大丈夫だ」

心配そうに俺を見つめる藤堂に少し微笑んで答えると、彼は深い溜め息をついた。

「全然、大丈夫そうには見えないけどな。・・・いつでも電話してこい、用が無くても構わない」

「ああ、・・・ありがとう」

励ますように俺にそう言ったあと、彼は再び書類に書き込み始めた。俺も中断していた作業に取り掛かり、生徒会室には俺達がペンを走らせる音だけが静かに響き続ける。

窓際の空席の、そこに置かれた花瓶の花が、もの言いたげに風に揺れていた。


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あきゅろす。
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