直感的学園生活
梅雨の恩返し 7
湯気の立った雑炊を一口食べた彼は、ぼんやりとした顔でこうつぶやいた。
「・・・甘くない・・・」
「・・・雑炊は普通、甘くないと思いますよ」
「・・・まろやかさが足りない・・・」
「十分とろとろに煮込んであるんですが・・・」
「エスニックな香りが足りない・・・」
「・・・そんな香りがする雑炊は聞いたことがありません・・・」
お椀を早々に僕に返してしまった彼は、再びベッドにごろりと倒れてしまった。
どうやら僕が作った雑炊はお気に召さなかったらしい・・・なんだろう、この敗北感は・・・。
倖田先輩は頭が痛いのか、呻きながら氷枕を押し当てている。
このまま一日何も食べなければ、風邪が治るのも遅くなってしまうだろう。
この苦しんでいるわがままな病人をどうしようかと考え込んでいた・・・その時。
ピンポーン。
鍵をかけていなかったドアが、勢い良く開いた。
「呼ばれて、飛び出てジャカジャカジャーン☆学園のアイドル、会計様のご登場です!」
「うるさいので早々にお引き取りください」
「ちょっと、無理やりドアを締めないで、僕の華奢な腕が挟まれている!」
目に痛いほど星を散らしている彼を、なんとか僕は追い返そうとしたが失敗してしまった。
部屋のドアが開けられると、会計が遠慮なく部屋の中まで入って来る。
「ふーん、品のかけらもない部屋だな・・・居心地は良さそうだけど」
「あの、・・・会計さんは何をしに来たんですか?」
初めて来たのか、倖田先輩の少し散らかった部屋をきょろきょろと見回している会計に話しかけた。
「僕のことは長田でいいよ。勿論、風邪で倒れているっていう倖田先輩を見舞いに来たのさ」
彼は手に持っていたピンク色の包みを高々と掲げた。
「僕お手製のキュートなキャラ弁☆これさえ食べれば、元気になれるよー」
「・・・まあちょうど、先輩は朝から何にも食べていませんから、・・・お弁当なら食べられるかもしれませんね。寝室に居るので、持って行ってあげてください」
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