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直感的学園生活
ある夏の真夜中に 5

夏希に、告白された。

僕は戸惑うばかりで、黙り込むしかなくて。
結局、僕がそのまま何も答えずに帰ってしまい、その一件はうやむやになった。

それから夏希が同じ言葉を口にする事はなく、僕達の関係は以前と変わらないように見える。
だけど、それは表面上にしか過ぎなくて、僕達の心がゆっくりと遠ざかるのを感じていた。

随分前に出て行ったはずの孤独感が、また僕の中に戻って来て住み着いた。
あんなにきれいに見えた空が、今の僕には色褪せて見えてしまう。

未咲と一緒に居れば、夏希が見守っていてくれれば、僕はそれで十分だったはずなのに。
どうして、こんなに苦しくて、泣きたくなるんだろうか。

鈴丸が行方不明になっていた事実は、その夜に電話があって初めて知った。
きっと、彼はひとりでずっと歩き回って探していたのだろう。

(どうして、僕を呼んでくれなかったんだ・・・)

あの小さな真っ白な命は、僕が小学生の時に拾い上げた。
捨てられていた子猫を、あの潔癖症な家は飼う事を許してはくれなかった。

誰にも必要とされず、愛されず、ずぶ濡れになって消えてしまう宿命の、余りにも儚い存在。
その姿が自分と重なってしまい、どうしても見捨てる事が出来なかった。

猫が捨てられていた場所に戻って来たものの、諦めきれずに立ち尽くしていた時に、僕は夏希と出会った。

―・・・そこに居たら濡れるだろ。ふたりとも、俺の家に来いよ・・・―




炎天下での作業を終えた僕らは、スコップを放り出して地べたに座り込む。

僕達が小学生の時に拾って、今が高校ニ年目の夏。
それが猫の寿命として長いのか短いのか、僕には判断がつかない。
けれど、それが僕と夏希が過ごした時間だとすれば、とても長かったと思う。

夏希と出会ってから、色々な事があった。決して楽しい想い出ばかりじゃない。
くだらない喧嘩した事は数え切れない程ある。仲直りした回数も、ちょうど同じだけ。

ずっと、ずっとこの関係が続いていけばいいと願っていたのに。
君はもう、あの頃と同じ場所に居てはくれない。

(好きなんだ、真咲)

なら、僕が一歩、君が居る場所へと近付けばいいのだろうか。
夏希の気持ちと自分の気持ちが、同じなのかはまだ分からないけれど。

こうして君の隣に居るだけで、世界には色が溢れ出して、僕の心を揺さぶり続ける。

なんて、眩しい青空。


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