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直感的学園生活
学園のテンペスト(上) 2

第十四回 学園のテンペスト(上)


暗転していた意識は、突然現実へと引き戻される。

(ここは、どこだ・・・)

俺は床に転がっている状態で目を覚ました。

電気は付いてなく、窓もカーテンに覆われて室内は暗い。
起き上がろうとすると、自分の手足が縛られている事に気が付く。

床には絨毯が敷かれていて、横になっていても冷たさは感じない。
暖房も稼働しているようで、今自分が置かれている状況にしては非常に快適だった。

俺はどのくらいの間、意識を失っていたんだろうか。
俺の精密な腹時計からして・・・まだあれから、然程時間は経ってないように思う。
少なくとも、日付を跨ぐ手前だろう。

意識を失う寸前に見た、犯人の顔。
どこかで会ったような気がする・・・いや、確かに俺は「彼」を知っているんだ。

(何時、どこで会った・・・?)

思い出さなければ、彼の為に、自分の為に。
この事件の真相に辿り着くには、それしかないのだから。

(ああ、駄目だ・・・また意識が遠のく・・・)

元々の寝不足もあって、俺は眠気に耐え切れず目を閉じた。

再び沈んでしまった意識は、思考の海原へと投げ出される。
無秩序に浮かんでは消える記憶の断片、それらを漂う内に、俺はひとつの手掛かりを手にした。


―・・・かわいそうに・・・―


犯人の面差しが、あの少年と重なり合う。

(ああ・・・そうか、彼だったのか)

―・・・良い思い出よりも、ショックな事の方が記憶に残りやすいですからね。子供の頃なら尚更です・・・―

(ああ、確か吉田君がそんな事を言っていたな・・・)

今となってはあの出来事が良かったのか悪かったのか、断言することは難しい。
ただ言えるのは、あの日が無ければ、今の俺は無いだろうという事だけだ。

(彼にとっては、あれはどんな出来事だったんだろうか・・・)

そこまで構築された思考は、砂の城のように波に飲まれて形を失う。
また俺は深い眠りへ落ちていき、意識は閉ざされた。



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