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直感的学園生活
ホームグラウンドの歩き方 4

「駒井」という小さな表札がかかった木造純和風民家は、雪化粧した姿で俺達を出迎えた。
俺と晴樹は、それを感慨にひたりながら見つめる。

「・・・こんなに小さかったか」

晴樹はぽつりと呟き、記憶よりも小さな家をじっと眺めていた。

彼がここへ来るのは、翔に催眠術をかけて以来の事だ。
小学生の目線と高校生の目線では、あまりにも世界は変わって見えるに違いない。
俺が夏に来た時に感じたものを、晴樹も同じように辿っていくのだろう。

「多分みんな、家に揃っていると思います。・・・ただいまー、帰ったよー」

翔は玄関の前に立つと、ガラガラと音を立てて引き戸を滑らせた。
俺も彼の横に行き、中から聞こえてくる賑やかな声に耳を澄ませる。

(そろそろおでんはいいかしら・・・きゃっ、今度は土鍋が!)

(そいや!・・・はぁ、はぁ・・・さすがに疲れたかも、今日はこれで二五回目のドジね・・・)

(ごめんなさい、もう本当に私ったらうっかり・・・あら、明彦さん)

(美沙子・・・俺の溢れんばかりの愛を込めて、この花束をお前に捧げる)

(ちょっとお父さん、今日はそれで四束目・・・飾る花瓶がもう無いわよ!)

(俺のこの家族愛を表現するには、まだまだ花が足りないんだ・・・!)

ガラガラガラ・・・ピシャン!

何も言わず勢い良く引き戸を閉めた翔に、後ろにいた二人は首をかしげる。

「どうしたんだ、中に入らないのか?」

早く入りたいらしい晴樹が、そのまま入口で固まっている俺達に声を掛けた。

「いや・・・今ちょっと立て込んでいるようなので、しばらくお待ちください・・・」

「うむ・・・一分後にテイクツーといこう」


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