直感的学園生活
少年よ、弁当を抱け 9
「このボスは、なかなかいい言葉を言うな。今度会ってみよう」
「倖田先輩・・・お弁当、そろそろ食べませんか・・・?」
「ふむ、確かにそろそろ時間が無くなってきたな」
「ありがたいボスのお言葉ノート」を歩きながらめくっていると、隣を歩く弁当少年が切ない声を発した。
確かに、このままでは弁当を食べないまま昼休みが終わってしまう。
再び校内地図を頭の中で広げた・・・その時、
俺の第六感が告げる。
―軽音楽室へ向かえ!そこにとびっきりのバラ色がある。―
・・・とびっきりなバラ色?なんだろうか。まあしかし、そこにバラ色があるんだな。
「弁当少年、軽音楽室へ行こう。あそこなら、人目もなく食べられるかもしれない」
「・・・ようやくまともな直感が・・・!」
「あれー倖田じゃーん。珍しい。何か用?」
「おお、バンドマン。今日も練習か、精が出るな」
「・・・人目あるー・・・」
軽音楽室の重い防音の扉を開くと、中にはエレキギターを携えた少年、通称バンドマンが一人立っていた。
「今年の学園祭用の曲、もう作り始めていてさ。でも、なんかいい歌詞が浮かばないんだよね、・・・歌詞さえできれば曲付けはすぐにできるんだけど。もう今日も無理そうだから、帰ろうと思っていたんだ」
バンドマンは持っていたギターを降ろし、ノートを片付け始めた。
「もしかして、このタイミングを狙って直感が・・・?」
「・・・いや、それは違うぞ、弁当少年」
第六感が「ここへ行けば、とびっきりのバラ色がある」と言ったからには、それ相応のことをしなければいけないはずだ。・・・つまり、このバンドマンの歌詞製作に協力しなければいけないというわけだ。
何度標語を応募しても落選してしまう俺に、その才能はないと思うが、・・・バラ色があるのなら、迷っている時間はない。
俺は楽器を持って軽音楽室から出ようとする彼を引き止めた。
「バンドマンよ、諦めるにはまだ早いぞ。俺の直感が告げているからな」
「何か案があるのかい?・・・言っておくけど、君のセンスには期待してないよ」
「ああ。だがしかし、俺は今日とてもいいものを手に入れたんだ。これをお前にやろう」
俺は手に持っていた「ありがたいボスのお言葉ノート」を彼に手渡した。
読み始めた彼は最初、適当にページをめくっていたが、ある所でその手を止めた。
「・・・これは、・・・いけるかもしれない・・・」
バンドマンは再びエレキギターを肩にかけると、軽快な音を鳴らし始める。
ジャーン、ジャカジャカ・・・
「友情、激情、苦情に、愛情、・・・全部抱えて、生きてるぜ!・・・この部分、リズムがいいな・・・!すぐに音が付けられそうだ」
ジャカジャカ ジャカジャーン・・・!
「お前だってそうだろう?俺の世界のパーツだろ?・・・ああ、いいな・・・!ここを最後に持って来よう。ありがとう、倖田!・・・そうだ、お前も一緒に歌ってくれ!」
「おお、任せろ!」
「・・・先輩、お弁当・・・」
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