直感的学園生活 少年よ、弁当を抱け 7 「ふむ、なかなか次の直感が降りてこないな」 「・・・もう・・・どこでもいいから弁当食べましょうよ・・・」 職員室を出てからは行くあても無く、二人でぶらぶらと廊下を歩いていた。 視界の端に、窓辺に寄りかかり頭を抱えて悩んでいる青年が入ったが、ピンと来なかったので通り過ぎようとした、・・・その時。 俺の第六感が告げる。 ―あっ、やっぱりこの青年の悩みを解決せよ!バラ色はそこにあったー ・・・なんとも歯切れの悪い直感だな。まあしかし、そこにバラ色があるならば仕方あるまい。 俺は少し元来た道を戻ると、考え込んでいる彼に近づいて声をかけた。 「そこの悩める青年、一体どうしたんだ?」 「・・・!あなたは、噂の倖田兄貴・・・」 青年は顔を上げると俺に真っ直ぐ向かい合った。彼の耳には無数のピアスがあり、目にはカラーコンタクトを入れているようだ。ああ、確か彼は・・・ 「君は2−Eクラスの金山君ではないか。どうした、廊下で考えことか」 「はい・・・。実は、これから2−Eクラスで、幹部を決めるための恒例会があるんです」 Eクラスは別名、不良組と呼ばれている。その名のとおり、この学園のやんちゃな人物が、まとめてそっくり収めてあるのだ。Eクラスにはボスという名の学級委員が存在する。 「ほう、それで君も幹部に立候補しているのか」 「ええ、そうなんです。・・・でも俺には自信がなくて。 どうしたら、あの尊敬するボスを満足させるだけの一発芸ができるのか、さっぱり思いつきません・・・」 「そうか、それは難儀だな」 「・・・は?」 「Eクラスの鉄板ネタ、拳を繰り出しながらの腹踊りは、俺より先にやる奴に取られちまって。俺もやろうと思っていたのに・・・」 「確かに二番煎じは危険すぎるな。他のことにするべきだ」 窓辺で金山君と肩を並べて相談していると、後方から弁当少年の鋭いツッコミが決まった。 「・・・いやいや、なぜに一発芸・・・!?普通、腕っ節の強さとか、統率力とか、そういうもので決めるんじゃないの!?」 金山君は眼光鋭い目で、訝しげに弁当少年を見ながら言う。 「いいや、Eクラスの総長と幹部は一発芸で決めると、二年前にこの倖田兄貴が決めたからな。どの学年も、そのルールに従っている。・・・誰だっけお前?」 「実に学生らしい仕組みだろう。学級委員は、笑いを取れる人気者がやるのがセオリーだ」 「・・・ああ、なるほど・・・」 説明を聞き終えた弁当少年はがっくりと頭をたれた。・・・さて、第六感がこの青年の悩みを解決しろと言った以上、俺はバラ色のためにやらねばならない。多少、他の幹部候補に不平等かもしれないが、俺の渾身のネタを彼に伝授しよう。 「金山君、そんな悩める君のために、俺は素晴らしいアイテムを持ってきた」 俺は鞄をおもむろに開いて探り、それを取り出した。 「これさえ使えば・・・お前は間違いなく幹部になれるはずだ」 [*前へ][次へ#] [戻る] |