直感的学園生活 ぼくの外側の世界事情D 1 ぼくの外側の世界事情 D ガシャン!・・・ドカドカドカ! 激しく窓ガラスを割られる音と共に、複数の足音が乱暴に家に上がり込む音がした。 狭い収納スペースに押し込められたおれと翔は、恐怖に体をこわばらせる。 ―・・・いないな。ちっ、ガキどもに感づかれたか。探せ、必ずいるはずだ・・・― (なんだ、何を探している?・・・あいつは、知之はどうなった・・・!) ガチャン、ガタガタ・・・! 室内を荒らし、あちこちを歩き回る靴音が、しばらく鳴り続けた。 ―・・・おい、ここに一人隠れていたぞ。おいお前、お友達はどこに行った。答えろ・・・― (・・・見つかってしまったのか・・・くそっ、おれはどうすればいいんだ・・・) ―・・・おれしか、今家にはいない。みんなちょうど出かけている・・・― ―・・・嘘を付け、俺達はずっと見張っていたんだよ、この家を。 確かに東野家の坊ちゃんが来たはずだ。答えろ、その子供はどこにいる?・・・― (俺を誘拐するのが目的だったのか・・・じゃあ、俺が出ていけば、あいつは助かるのか?) そう思ってすぐに気がつく。・・・あいつはここに外から鍵をかけた。 知之が口を割らない限り、ここは開かない。 (声を上げて気づかせるか?・・・いや、それは駄目だ・・・) すぐ隣にある温もりに、俺はその考えを捨てた。・・・ここが見つかれば、同時に翔にも危険が及ぶ。 俺が見つかったからといって、犯人が二人を見逃す保証はない。 むしろ俺が見つかってしまったら・・・目撃者である彼らを、殺す可能性だってあるのだ。 パニックになりそうな頭を、俺は必死に働かせようとする。 (どうすればいい、どうすれば・・・!) ―・・・ここに、彼はいない。俺しかこの家にはいない・・・― ―・・・ちっ、頑固なガキだな!とっとと吐かねえと殴るぞ!言え、どこにいる・・・― ―・・・いない。彼らはここにいない。お前達には絶対、見つけられない・・・― ―・・・いい加減にしろ、大人をなめてんじゃねえよ、クソガキ!・・・― バキッ・・・バタン! 「っ、・・・!」 殴られ、床に激しく倒れる音に、隣にいる彼が悲鳴をかろうじて呑み込む。 おれは震えている翔を、しっかりと抱きしめた。 (・・・知之・・・!) ―・・・痛いだろう、さっさと言わねえからこうなるんだ。ほら、はけよ!・・・― ―・・・げほっ、・・・いないものはいない。ここには、俺しかいない!・・・― バキッ・・・ドカッ・・・! 彼を激しく痛めつける音、苦しさに咳き込む声、・・・あいつの悲鳴。 (・・・なぜ、どうして・・・あいつが、こんな目に合わなければならない・・・) 俺の心は徐々に、恐怖と無力感にがんじがらめにされていった。 体の震えが止まらない。翔を抱きしめる腕に力が入る。 (おれが、おれが・・・この家に来たから、二人と一緒にいたから・・・?) 何も出来ない自分自身への怒りと、激しい後悔が俺を苛む。 (知之、ともゆき・・・誰でもいい、誰でもいいから・・・あいつを助けてくれ・・・) 無力なおれに唯一出来る事は、「祈る」くらいしか残されていなくて。 震え続ける翔を抱きしめ、知之の悲鳴を聞きながら、ひたすらに願った。 この悪夢が、早く終わるように。彼が、これ以上傷つかないように・・・ ただ、祈り続けていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |