直感的学園生活 学園祭の中心で愛を叫ぶ(バラ色ライス) 1 第七回 学園祭の中心で愛を叫ぶ(バラ色ライス) 着ぐるみを脱ぎ捨てた僕は、先程の事件の犯人が必ずいると思った、その場所に来ていた。 ・・・校庭の桜の木の下。そこには黒いワンピースを着た彼が立っていた。 すっかり日が沈んでしまった今、その場所は薄闇に包まれている。 「今井先輩、・・・どうしてあんなことをしたんですか。遠藤先輩と谷先輩に一体どんな恨みを持っているんです、あなたは・・・」 僕の言葉に振り返った彼は、・・・酷く寂しく苦しそうな表情をしていた。 桜の木にもたれかかった彼は、静かにその一節を口にした。 「この美しい季節の一瞬一瞬を、大切な人とずっと見られ続けたら、それは本当に幸せなことですね・・・」 「校庭のサクラの、第二幕で出てきたセリフ・・・」 「僕が実際に言ったことなんです、今はもう学園にいない彼に。・・・僕の大切な人に」 今井先輩がそう呟いてから間を置かず、その場に息を切らして走って来た人がいた。 東野生徒会長だ、何でここに。 「今井・・・やはりここに居たのか・・・」 「・・・東野君。全校生徒を把握している君になら、すぐわかる事でしたか。さすがですね」 「今日起きた三つの事件・・・一応確認するが、すべてお前がやったことか?」 「ご明察です。・・・くだらないとはわかっていますけど、どうしてもやらなければいけなかった。・・・今日の学園祭を、彼らが楽しむことが許せなかった・・・!」 急に感情をあらわにした彼は、もたれかかっていた木に爪を立てた。 ガリガリ・・・という嫌な音たてて、彼の細い指が硬い木肌を削る。 「・・・今年の2月。・・・バレンタインの日に、僕はある人に告白しました。彼には返事を待って欲しい、答えが出たら必ず伝えると言われました。・・・でも、その彼は突然、この学園から去ってしまった。・・・そんなの、おかしいじゃないですか・・・!」 「だから、お前は自分の親衛隊員ばかり狙ったのか。・・・そいつが制裁されたという確かな証拠はあるのか」 会長の低い冷静な声が、今井先輩を落ち着けるように響いた。 「・・・僕は見たんです。彼がいなくなる一週間前に、親衛隊長の遠藤君と彼が人気のない場所で話しているところを。・・・遠すぎて、何を話しているかはわかりませんでしたが」 「それだけではわからないだろう。お前の親衛隊奴らに過激な制裁をする人間がいると思えん。・・・何故、彼らを信じてやれない」 「無理なんです・・・僕は弱い人間だから。自分に起こった不幸を、誰かのせいにせずにはいられないんだ「モコモッコーン!」・・・え?」 「「・・・なっ、何だあれはー!」」 僕と東野生徒会長の絶叫が、重なって校庭に響いた。 ズシーン、ズシーン、 モコモッコーン!モコモッコーン! 「・・・わけがわからん。・・・何だ、あの巨大なピンクのロボは!一体何の冗談だ・・・」 「僕にもわかりませんよ・・・あっ、誰か走って来る」 巨大ロボを追い抜くようにして、暗い校庭から二つの人影が現れた。 長田君と、・・・あの懐かしいショッキングピンクマリモは誰だろうか・・・。 「おーい、君達―!早く逃げなさい、このロボは制御不能状態なんだー」 「あー会長!ごめんなさい、僕が作ったロボが大暴走中です☆」 「こんな状況できらめくな、会計!・・・このコースなら校舎は無事そうだな。山にぶつかって止まってくれりゃいいが・・・おい二人共、逃げるぞ!」 「はい、・・・今井先輩、早く!」 「・・・桜が」 ポツリとそう呟き、動こうとしない彼の腕を掴んだ会長は、僕と共に走り出す。 「おまえが無事じゃなきゃ、そのいなくなった彼はどうなる、阿呆!・・・独りよがりになるな、今井。自分を想ってくれている人間達の存在を忘れるな!」 会長に引かれるがまま足を動かしていた彼は、自分の意思で地面を蹴って走り始めた。 [次へ#] [戻る] |