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直感的学園生活
真夏の夜の大合唱 8

「そうだ、倖田君。この残りのパウンドケーキを坂井保険医に届けてくれないかな?・・・多分今頃、明日から始まる二学期のことを考えて相当暗くなっているはずだから。悪いけど頼んだよ」

加藤司書からケーキの包みを持たされた俺達は、保険室のドアを開いた。

入るとすぐに、何とも言えないどんよりとしたオーラを発している保険医を見つけた。
彼はキャスター付きの椅子の上に体育座りをしている。

「・・・いらっしゃ〜い・・・。どうしたのかなぁ?・・・僕は明日から始まる新学期のことで、いっぱいいっぱいだよぉ・・・ああ、夏休みが永遠に続けばぁ、ここには誰も来ないのにぃ・・・」

「・・・物凄く切なくなるな・・・」

「そうですね・・・」

「・・・ああ、倖田君と駒井君かぁ。何か用かい・・・もしかして、僕を励ましに来てくれたのかなぁ・・・」

俺は司書から預かったパウンドケーキの包みを彼に差し出した。

「加藤司書から差し入れだそうだ。保険医、甘い物を食べれば気持ちも落ち着くだろう」

「・・・ありがとう、ちょっとだけ未来への希望が持てそうだよぉ・・・。加藤君の手作りお菓子がなかったらぁ、きっと僕は学園生時代で首を吊っていただろうなぁ・・・」

「・・・そんな恐ろしいこと言わないでください・・・坂井さんも、もしかして加藤さんや斎藤先生と同級生だったんですか?」

「そうだよぉ・・・彼らと合唱部で一緒に歌ったんだぁ。・・・あの頃はまだ希望に満ちていたなぁ・・・今の僕と言ったら、片足を棺桶に突っ込みそうなほど、絶望しているよぉ・・・」

再び絶望オーラを出し始めた彼に、俺はもらった古い楽譜を差し出した。

「坂井保険医、そう絶望するな。あなたもこの曲を歌ったことがあるのか?」

「・・・ああ、久しぶりに見たなぁ、この楽譜。・・・僕達の、幸せの歌だ」

珍しく明るく笑ってみせた彼は、そっとその古い紙に触れた。



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