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直感的学園生活
真夏の夜の大合唱 4

「あー、プリントの束あったわー。ちょーくしゃくしゃだけど。やっべーまじうける」

「・・・そのゴミのようなものを配布するんですか。斎藤先生の受け持ちのクラス、いつもこんな状態のプリントを受け取っているんだろうな・・・可哀想に」

「ちなみに俺はその可哀想なクラスだが。もらったプリントを元の状態に戻すため、分厚い辞書に挟み込むことが習慣となっている」

仕事に不要そうな物を一掃した顧問のデスクは、ようやく職場としての機能を取り戻した。うむ、自分が整理した場所を眺めると、清々しいな・・・。

俺は作業の対価をいただくため、デスクの脇に出来た不要物の山へと近づいた。・・・その時。

俺の第六感が告げる。

―その山の中にある、本を選べ。それからバラ色が動き始める―

カラフルなマラカスを握ろうとした手を止め、俺はその隣にあった古い一冊の本を手にとった。

「斎藤顧問、これは必要ではないのか?」

「あー、いいぜ。それはもう一字一句全て覚えているからなー。俺ってちょーまじ頭いい」

「・・・その頭脳があって、なぜそんな荒んだ日本語なんですか・・・」

「それでは遠慮なくいただこう、・・・何か落ちたな」

本のページをパラパラとめくっていると、一枚の紙がハラリとこぼれ落ちた。

随分古いものらしい、その紙はかなり黄ばんでいる。
一度くしゃくしゃになってしまい、シワを伸ばすために折り畳んで挟んであったようだ。

俺が拾い上げたそれを、顧問はまじまじと眺めている。

「・・・おー、これはちょー懐かしいなー。ここにあったのか」

「合唱の楽譜か。斎藤顧問が昔歌ったのか?」

「ああ、俺がこの学園生だった頃にな。合唱部に所属していたんだぜ、まじ意外だろー」

俺からその楽譜を受け取った彼は、書き込みが沢山あるそれを自慢げに掲げる。

「確かにそうですね。・・・というか斎藤先生、この学園の生徒だったんですか?」

「ああ。ここの教師や職員は学園の卒業生が多いぜ。・・・俺はどうしようもないサボリ常習犯だったけどなー。まともに授業を受けたことはなかったぜ、ちょーだりいもん」

「・・・どうしてまた、教師になって学園に戻って来ようと思ったんだ?」

俺が投げかけた疑問に、少し間を置いてから彼は口を開いた。

「・・・この学園のことが死ぬほど大好きな、阿呆が昔居たのさ。そいつの馬鹿に付き合っているうちに、感化されちまったんだろうなー」

斎藤顧問は口にポッキー咥え、優しげな微笑みを浮かべた。

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あきゅろす。
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