直感的学園生活 家族会議は踊って騒いでホームラン! 8 雨上がり少年が布団を運び終えて俺達が二階から降りると、玄関から誰かが入ってくる音がした。 「母が畑仕事から戻って来たのかもしれません。玄関に行ってみましょうか」 廊下を抜けて玄関へ引き返すと、カゴ一杯の野菜を抱えた女性が立っていた。 俺達の姿を見た彼女は優しげな顔を微笑ませ、ゆったりとした調子の声で話しかける。 「あら翔さん、もう帰っていたの。・・・それと、お友達の倖田さんですね。翔の母の美沙子です。自分の家だと思って、ゆっくりしていってくださいね」 「はい。しばらくの間よろしくお願いします、美沙子さん。・・・立派な野菜ですね」 美沙子さんが持っている新鮮そうな野菜を、俺は惚れ惚れと見ていた。 「今年もうちの畑は豊作で、食べきれない程野菜があるんですよ。近所におすそ分けしてもまだまだ沢山あって・・・っきゃ!」 足元の段差につまずいた彼女は、持っていたカゴの中身を勢い良く放り上げた。 むむむ、俺の直感が右斜め後方に避けろと叫んでいる・・・! スペインの有名な祭りのごとく、完熟トマトが激しく俺達の頭上に降り注いだ。 「やだ、私ったらもう、うっかりさん・・・ごめんなさい、大丈夫でしたか?」 「俺は大丈夫です。雨上がり少年はどうだ」 「・・・トマトに混じっていたゴーヤが直撃しました・・・」 少年は床に散らばった野菜を拾いつつ、痛そうにおでこをさすっている。 [*前へ][次へ#] [戻る] |