直感的学園生活
prologue
俺は生まれつき、とても第六感が優れた人間だった。
例えば、歩いている道の先が二つに分かれていたとして、俺が選んだ方が外れだった試しはない。
「こっちに進んだ方がいいことが起こる」という直感が、結果的に損のない選択肢を俺に選ばせるのだ。
おかげで、今までの俺の人生は順風満帆と言っても過言ではない。
しかもこの能力は年々向上している。
最近では雨が降るかどうかなんて、天気予報を見なくても「今日は傘を持っていったほうがいい」という直感でわかるようになった。
・・・まあ、予報を見れば誰だってわかることだが。
そういう訳で、俺は今校内を吹き荒れている大嵐、「時期外れの壮絶KY転入生」をも安々と避けて通り、巷で噂のエキセントリックな彼の髪型すら拝んだことがない。
彼が初登校した日は「今日は学食には行ってはいけない」という直感が働き、購買で買った焼きそばパンを静かな中庭で美味しくいただいた。
・・・俺がいない学食では阿鼻叫喚の大騒ぎが起こっていたらしい。詳細はよくわからない。
学園のアイドル的存在、生徒会メンバーのほぼ全員を骨抜きにしてしまったらしい彼は、その後も校内のあちこちでトラブルを発生させて回っているそうだが、やはり俺は彼の影すら見かけたことがなかった。
どうやらその転入生を避けて通ることが、俺の充実した学園生活のためには必要なようだ。
小中高一貫の男子校のこの学園には、俺は高校の頃から通っている。
入学して驚いたのが、・・・この学園のほとんどの生徒が同性愛者らしいということだ。
この学園を選んだのも俺の第六感によるのだが、さすがにこの事実を知ったときは自分の能力を疑わざるを得なかった。
更には、この学校の生徒は金銭感覚が俺とは恐ろしく異なる人種ばかり、つまりは金持ちの良家のご子息ばかり集まっている。
そんな生徒達が通うこの学園の校舎は、とんでもなくきらびやかで豪華な造りをしていた。
「なんという異世界に俺は来てしまったんだろう・・・」と、天井にぶら下がっているシャンデリアを俺は気の遠くなる思いで見つめながら、・・・生まれて初めて、勘だけに頼って選んだことを後悔した。
だがしかし、その後悔は入学してすぐに払拭されたのだ。
その理由は今、俺の目の前にある。
「今日もなんて美味そうなんだ・・・」
湯気のたった麻婆豆腐が、食欲をそそる匂いを漂わせている。
俺はその赤いスープを掬い、口へとゆっくり運んだ。・・・絶妙な辛さと甘さが、口中に広がっていく。
「この美味い料理をタダで好きなだけ食べられるなんて、この学園に入学して間違いはなかった・・・今日も変わらずバラ色な俺の人生の、なんと素晴らしいことか・・・」
こうして俺は今、幸せな学園生活を満喫している。
うん・・・美味い。
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