lost memory, last train
musei doukoku 6
あの日、俺は一樹と幸也と一緒に、海岸の近くにある駅のホームにいた。
「なんだったんだろう、今の揺れは・・・駄目です、携帯は通じません」
「この地震じゃ、ここは絶対危ないよ、早く避難しないと・・・」
「・・・ああ、急いで山の方へ行こう」
道路はあちこちがひび割れ陥没し、崩れているコンクリートの塀や倒れた電柱が行く手を塞ぎ、想像以上の悪路だった。坂道を登る途中、来た道を振り返り海を見ると、波打ち際が驚く程遠くにあった。
「相当高い波が来るぞ、これは・・・」
山の一番上にある広場に、10分程かかり、ようやく俺たちはたどり着いた。
既にそこには沢山の人が避難していて、どの顔も不安そうに海の方を見つめている。
その場所からは、町の様子もよく知ることができた。
ここよりも低い場所に避難している人々の姿も見える。
「あんなところで大丈夫なのか・・・?」
あの尋常じゃない海の様子。まだあの波打ち際が引き続けているとしたら・・・、
「・・・駄目だ、あそこは・・・。知らせに行ってくる」
「えっ、どこへ行くの、危ないよ、文人!」
「先輩、やめてください、危険です!」
「大丈夫だ!すぐに戻る、・・・持っていてくれ、」
肩にかけていた鞄を幸也に押し付け、俺は山を急いで降り始めた。
嫌な、胸騒ぎがする。
緊張してこわばりそうになる身体にムチをうち、全力で走った。
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