lost memory, last train candle 6 僕の足は無意識に、森を抜けた先にある切り立った崖へと向かっていた。 思ったよりも強い潮風は、少し寒く感じる。 崖の下に広がる海を覗いた。 今ここで飛び込んだとして、この世界で僕は死ねるのだろうか。 ・・・いや、落ちてしまったら現実の世界へ戻ってしまうかもしれない。それだけは避けないと。 僕は崖から離れ、いつもの樹の下で寝転ぶ。 草の中に潜んでいた虫たちが、驚いて飛び去っていった。 瞼を閉じれば、波の音が聞こえてくる。 そのまま僕は、浅い眠りについた。 家に戻ると、幸也は部屋にいなかった。おおかた、いつもの場所に行ったんだろう。 まあこれから俺がやろうとしていることを考えれば、今は彼がいない方が、都合が良い。 「先輩、それで結局何を作るんですか?」 質問してきた彼に、俺は本棚に収まっていた一冊を取り出し、あるページを開いた。 「これを今から作ろうと思う。少し手を貸してくれないか、一樹」 [*前へ][次へ#] [戻る] |