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lost memory, last train
candle 4

30分程だらだらと歩き続け、ようやく家から一番近い店に到着した。

早速かごを取り、次々に品物を中に放り込んでいく。
一樹はあまりスーパーに来ないのか、物珍しそうに店を見回しながらついてくる。
その目が子供のような好奇心で輝いていることに気がつき、微笑ましくてこっそりと笑った。

「ああ、そうだ、今日は・・・」

俺は乳製品のコーナーへ行き、無塩分バターと生クリームをかごに入れた。
ああ、じゃあ製菓コーナーにも行かないとな。引き返す俺を、不思議そうに一樹が見ている。

「何を作るんですか?」

「まあ、家に帰ってからのお楽しみということで」

あとは、苺か。




二人が出て行って静かになった家で、僕は一人、薄暗いアトリエの椅子に座っていた。
絵を描くわけでもなく、ぼんやりと何も無い虚空を見つめる。

この部屋で、もう失ってしまったはずの彼を見つめ、筆を動かしたあの時間、・・・僕はとても幸福だった。

だけど、それが永遠ではないことを知っている僕の心は、同時に苦しさを覚え、その二つの感情のせめぎ合いに耐えながら、彼を僕の世界につなぎとめるように、あの作品を完成させた。

彼をこの世界に引き止めているのは、僕だろう。

彼にとっても、自分にとっても、この箱庭にとどまることが、本当にいいことだとは思っていない。
ずっと続けられるわけではないことも、わかっている。

けれど、それを求めることは、望むことは、いけないことなのだろうか。

一番大切な人と、ずっと一緒にいたい。・・・そんな些細な願いなのに。

(ねえ、かみさま・・・)

虚ろな目をした僕は立ち上がり、アトリエから出て行った。



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あきゅろす。
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