lost memory, last train
Carnival 9
呆然と、俺は閉じられた幕を眺めていた。
その黒い布一枚を挟んだ向こう側に、彼が、文人先輩がいるはずだ。
あの時と全く変わらない彼の姿に、どうしようもなく胸が熱くなった。
席から立ち上がって彼の名前を呼びかけたい、自分にその目を向けて欲しいと、・・・願ってしまった。
もう周囲には誰も残っていない。早く教室から出なければと席を立ち上がったとき、
(あの蝶が、いる)
青白く光る蝶が、前にある座席に止まっていた。
俺が見ていることに気がついたのか、羽を広げて飛び始め、教室からゆっくりと出て行った。
(ついて来い、ということか)
俺は再び、蝶の跡を追い始める。
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