lost memory, last train Carnival 1 「おーい、幸也、早くしろ。準備に間に合わないぞ」 「はいはい、ふわぁー・・・眠いなぁ」 学園祭当日の今日は、開店の準備があり、30分いつもより早く家を出なければいけない。 幸也はいつものように慌ただしく準備をしている。 鞄のなかで携帯電話が振動した。届いたメールを開くと、生徒会からの連絡だった。 準備中に少々問題が起きたらしい。 やっぱり早く学校へ行かなければ・・・画面を閉じて携帯をしまおうとした、その時。 赤く光る何かが、目に入った。 (ああ、これは、) 俺は手を止め、ケータイについているストラップを見た。 緋色の、綺麗なとんぼ玉だ。白い花のような模様が入っている。 確か、誰か大切な人からもらったはずだ。(彼は、ここにはいないのだ) 何故か、とても心に引っかかる。(彼は―――かったから) 誰にもらったものだったか、どうしても思い出せない。最近のことだったはずだ。 (奇妙な安心と、寂しさが、) 「なあ、幸也、このストラップ、お前がくれたんだっけ?」 ようやく一通りの準備を終えた幸也に聞いてみる。 彼は一瞬だけそれをじっと見た後、興味無さそうに目をそらした。 「さあ、僕じゃないけど。さあ、急ごうよ、遅れちゃう」 幸也は俺の背中を押して玄関へ進む。 「・・・お前が待たせていたんだろうが」 (俺が赤で、幸也が白で、――は青い、) 第三章 Carnival [*前へ][次へ#] [戻る] |