lost memory, last train darkness 9 ある日、父さんが突然倒れた。 文人のお母さんと、同じ病気だった。 文人は、父さんの様子が母親の病気の症状と似ていたから、なんとなく感づいていたらしい。 病院に通っていることや、こっそり薬を飲んでいることも知っていた。 僕は、なんにも知らなかった自分が恥ずかしくて仕方がなかった。 緊急処置が終わり、幸い容態は安定して、病院の白いベッドに横たわる父さんが目覚めるのを、側で文人と一緒に待った。 「伯父さんが自分から言い出すまで待っていた、・・・伝えなくてごめん」 「黙っていた本人が悪いんだよ、文人は悪くない。余命半年か・・・」 僕たちの会話は途切れ、病室は重たい静寂に包まれる。 眠っている父さんの顔は血色が悪く、とても老け込んで見えた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |