[携帯モード] [URL送信]
出会いは必然



全てはここから始まった、なんて大きすぎる形容詞ではあるが。
その日、とあるレストランはある人が連れてきたアルバイト希望の女の子で話題が持ち切りだった。


「へーコタが連れてきたの?知り合いにあんな可愛い子いたんだ」
「Fum,どうやら近所に住んでる幼なじみで、紹介を頼まれたらしいぜ」
「なになに?おっ、あの子マブいじゃねえか!」
「…チカちゃん最近の人はマブいなんて言わないよ」


身を乗り出して控え室を扉から覗いてるのはここの従業員(+α)。シャツに黒いスリットパンツを穿くのが従業員スタイルであるが、一人は従業員でない外部者であるし、その格好はまた統一感がない。

キチンと着ながらも胸の辺りを開けて右目に眼帯をつけたもの、思いっきり砕けさせて橙色の髪を後ろに結ったもの、髪の毛は銀髪だがそれ以上に目立つ有りがちな魚屋さんスタイルをする左目眼帯。

ここのレストランは仕入れする業者まで良い男ぞろいだなんて言われるが、まあ至って本人たちは気にしていない。
…良い男だと自負はしているが。
(そういう所が格好悪いんだと隣の喫茶店のかすがは苦言を吐いた)

因みにもう一人図体のデカい、髪の毛が長くたまに猿を連れてる男がいるが(飲食店でどうかと思う)今日は何時もの如く遅刻しているらしい。

それよりも今は、目の前の光景である。


「風魔の彼女かなんかか?」
「まっさか!コタは俺様が管理してるんだよ?そんな話聞いたことないし!」
「管理してるってなんだよ犬か?猿が犬を管理って…フッ志村zooのpanとJamesみたいだな。」
「普通に志村動○園のパンとジェームスって言えば。ドヤ顔が余計イタいよ政宗くん」
「うっせ猿」
「うるさいウザ宗」
「まあまあ、そう喧嘩するなって!でも可愛らしいよなーあんな子が働くならまた客入りも増えんじゃん?」
「あー確かに。ナリちゃん今まで女は面倒くさいって言って雇わなかったのにね。わざわざ面接してるなんて余程なのかな?」
「まさか明日から仕事場に
angelが舞い降りるか?
…ガッデム!!明日シフト入ってねえじゃねえか!なんてこった!」
「…政宗様、大袈裟なガッデムポーズは良いですがお仕事してください」


大袈裟に頭を抱えて膝をつく男に、低い声でため息をつくように話しかける。
ドアを覗く三人の後ろに立ったその人は、びしっとしたスーツを纏いオールバックでその髪を決め込んでいた。

因みに彼は、見た目は怖いがその系ではない。その系に間違われるが、ぽいのだが、決して違う。(だけどやはり怖い)


「小十郎おおお!!明日シフト入れてくれ!!俺研修したいんだよホラ、俺人に教えるの得意じゃん?!」
「うっわズリイ!俺だってしてえよ!研修担当はこの長曾我部元親が手取り足取り」
「ってあんたタダの魚屋でしょうが!ダメダメダメぜっったい俺様でしょ?政宗はダメだって!だって片目だもん片目の人生しか見てきてないんだもん!」
「良いから黙れ…フロアに聞こえる。それにシフトは店長の俺じゃなくオーナーの」
「ああそうだ我が決める。それより貴様ら黙らんか。こっちに丸聞こえだ」


眉間にしわを寄せてあたかも迷惑そうにドアを開けたその人物。
名札のオーナーの肩書きの下には毛利元就とその名が刻んであった。
どうやら余程ウルサかったらしく、邪魔になるからと殴られながら中に促される4人。
そこには今の今まで噂をしていた女の子と、紹介をした小太郎がそばにいた。


「(!佐助…何してるの)」
「えっ?あ、いや…コタが女の子連れてきたからびっくりしてさー」
「風魔のhoneyかって噂してたんだよな」
「ああ、恋人なら百歩譲って口説くだけにしとくぜ」
「それ口説くなら譲ってないじゃんチカちゃん」
「いいんだよ!数打ちゃ当たるんだから!」
「その最悪な考えlikeな感じだぜ!さすが元親!」
「ガッデム政宗!」
「で、コタの彼女なの?」
「(ちがっ…ただの幼なじみだって…伊達くんにも話したのに…)」
「本当に?コタ俺様に内緒ごととか駄目だからね?」
「(コクコク)」
「だから本当だと言っておるだろう。というより黙れ…さもないと貴様らの給料半分カットか全面カットか髪の毛をテクノカットにしてやるぞ」


オーナーは何分鬼畜な奴ではあるが、today is 鬼畜である。四方や包丁を持ちテクノカットをしようとする姿は恐怖を通り越して怪奇でしかない。
まあ、その対象は銀髪にしか向けられないのだが。(ほら、テクノカットだ)(いやっ止めて!止めてくれ!)(ジッとしておれ乳首晒しが)(晒しってそれは前世!いま晒してないからアアア!)

…まあ、それは良いとして。そんな奇人変人を興味深く見ている人物。
彼女は中学も高校も女子校という花の中を育ってきたため、目の前の現実を勘違いしようとしていた。


『すごい……これが大人の男性なのか…

なんかイメージと違う…かも?』


どうしようもない奴らが其処にはいるのだから仕方ないが、是非ともそんな純粋な目でこいつらを見ないで頂きたい。いや、本当に。

この馬鹿らしいやり取りがまだまだ続くことも知らず、彼女は小太郎に頭を撫でられながら暫し傍観するのだった。




「佐助え!なぜ厨房に居らぬのだ!竹中殿がおにおんぐらたんすうぷとやらを」
「あっ旦那!見て見てすっごい可愛い女の子が」
「なっお前は職場に来てまでおなごの話か!飢えすぎだぞ佐助ええ!(ボカッボカ)」
「(ええっ)ちがっ、殴らないでよちょっと!」
「幸村くん僕のオニオングラタンスープはまだかい?早く食べないと秀吉との約束に遅れてしまうじゃないか」
「すまぬ、佐助がおなごが出たなどとうつつを抜かしており」
『あ、あの……すみません忙しい時みたいで』
「………」
『……?』
「………………おなご(バタッ)」
「わっ旦那が倒れた!」
「あれ、可愛い子がいるじゃないか。君は新しい店員さん?」
「遅刻しちまったーと…あれ、なんで幸ちゃん真っ赤な顔で倒れてんの?」
「(わたわた)」
「え?女の子見ただけで倒れた?」


此処の常連さん、竹中半兵衛が彼女にちょっかいを出す中、事態はまた右往左往と動いていく。
事態のハチャメチャ度にたった今来た慶次はついて行けず、1人ぽかんとするのだった。


「何だってェんだい?みんなドタバタして…

まあ、怒られないみたいだし良かったけど♪」


黙ってた小十郎が我慢出来ずにどデカい雷を落とすのはこの数秒後。

彼女はここで働く大変さなどつゆ知らず、とりあえず雇われる事になってホッと胸を撫で下ろしたのだった。


『ありがとう風魔くん、紹介してくれて』
「(うん…柚のためだから)」


出会いは必然


(騒がしい毎日の始まり!)





[→]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!