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間の悪い男
※R18!!!








いとしい、いとしい恋人に会いに行くのに、理由なんて要るのかい。

それはそう、構いやしないけれどね、あんた。時と場合というものは弁えなきゃあいけないよ。


ああ、あれは何処で聞いた会話だったか。


確か――、

《どうにも間の悪い男》が、好いた女の元へ通っていく話の中だった。
男は不思議な婆さんにそう引き止められたけれど、逢いたい一心だったんだな。

その腕に抱きたくて駆け付けるんだ、愛しい女の元へ。

でも、まさかなあ、

愛した女が
余所の男に抱かれて居るなんて。


夢にも思わないよなあ?

ああ――なんて、



間の悪い男。






(――俺はどうやら、「時」を見誤ったのかもしれない。)
あまりに異様な光景を目にして、正守はしばし立ちすくむしかなかった。



神出鬼没な正守が、ふらりと実家に立ち寄った、ちょうど半刻前。
良守は自室でどうにももどかしい感情と闘って居た。



――――……‥・



良守は7つも年の離れた、実の兄と肌を重ねるようになってから、もう随分になる。
はじめこそ身体を裂くような痛みに血を涙を流していたものだが、慣れか進歩か、近ごろは兄の手が触れるだけで身体のあちこちがじんわりとした熱に浮かされ、身体中を蕩かすようなくちづけと愛撫に身悶え、与えられる激しくて甘い快感の波にごく自然と身を委ねられるようになっていた。

自身を慰めることを知ったのも、兄との関係を持ちはじめてからだった。もとからそういった事に大して興味を抱くことがなかったし、なにより邪な衝動に自分というものを見失うことを嫌ったので、性についてはあまり熱心に知ろうとしなかったのだ。

ところが、そんな良守が兄によって、自らの身体の中心、どころか、良守ですら触ったことのない所を半ば無理矢理に暴かれ、快楽を味わうことを覚えさせられてしまった。


――そうして時には、どうしてもそういうむず痒い感覚が、良守の身体中をじくじくと縛り付けるのだった。


よりにもよって、何も知らなかった良守に淫猥なその行為を教えこんだ張本人が、そうやたらに顔を見せる人物ではなかったことが、一層良守の情欲を燻らせるようになっていた。
あんまり辛い時は、自らの手で、兄がしたのを思い出し、記憶をなぞりながら前を弄って慰めたりもしたが、一度覚えてしまった快感というものはそう簡単には忘れられないもので、たとえ一度精を放ったとしても、その先の、身体を中心からぐずぐずと蕩かすようなあの感覚を、身体が求めてしまうのだった。


それでも、あの行為を、一人きりで行うことにどうしても背徳を感じてしまい、そう易々とあの秘めたる部分に手をのばす決心は付かず。

そして、最後に兄に会ってから幾月か経った今日。
夜の勤めを終え布団に横になった良守を、またあの忌々しい、もやもやとした感覚が包んでいた。

――――……‥・





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