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くちばしにチェリー



今朝良守は、ふわりふわりと波間を漂うかのように心地よい眠りを、兄によって放たれた式神によって突然に妨げられたのだった。



「な……っんだよ…っ!?」
がばりと飛び起きて忌々しい音の響いてくる方を見―――、
窓辺に立ちゴツゴツと喧しく硝子を突く、式神の姿をぼんやり捉らえた。


ふあぁ、と大きな欠伸をひとつして、眠い目をこすりながら窓を開ける。
人騒がせな使いはするり、冷えた空気と共に室内へと滑り込んだ。


「……で、なんなんだ…?」
そう問えば、式神は小さな包みをぽとりと落として直ぐに、『ポン』と音をたてて、ただの紙になってしまった。


「…………何コレ。」

良守は、その小さな包みを拾い上げ、
(過去にも幾度か兄からの式神を受け取ったことがあったのだけれど、そのどれもが「マトモじゃなかった」ことを思い出して、)
なんだか余り喜ばしくはないプレゼントに、がっくりとうなだれる。
――またわけのわからん手紙(あれは絶対中学生の書く恋文である、)か、はたまた仕事先で手に入れた、趣味の悪い土産物であろうか…。



はぁ。
と大袈裟に溜め息をついて、包みは開けないままに寝間着のポケットに押し込んで、良守は朝の身支度にかかった。



(…今日の運勢、絶対最下位だ。)


普段信じない、星占いなんかを引き合いに出してみたりして。








あきゅろす。
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