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第一話 手【て】


混乱は、日常を壊して突然やって来る
今の私は………そんな状況の中にいる


「ひどい殺され方だったみたいよ…桂木さんのご主人」
「しかも捜査は難航しているなんて…弥子ちゃんと夜久斗ちゃんもさぞ不安だろうねぇ……」
『…聞こえてんぞ、アンタ等』


内緒話というには少し大きい声の主たちをひと睨みしつつ、オレは前方で立っている姉さんに近付いた


『…姉さん』
「夜久斗…。どうしたの?」


悲しそうな顔を引っ込めて、姉さんは無理矢理に笑顔を作ってオレに顔を向けた


『姉さん、無理すンな。部屋に行っとけよ』
「大丈夫だよ、全然平気」
『だけどよ…』
「大丈夫?弥子、夜久斗」


姉さんと不毛な言い争いを続けていると、
母さんが声をかけてきた


「お母さん…うん平気」
「あんまり寝てないでしょ?少し休んどいで」


母さんは目の下に隈を作りながら言った


『…母さんこそ休めよ、ンな隈つくってちゃ心配でおちおち寝てらんねェ。あ、姉さんはしっかり寝とけよな』
「子供が大人の心配すんじゃないの!ホラ行った行った!」
『ちょ、母さん!』


グイグイ肩を押されて、オレと姉さんは端の方に追いやられてしまった
後で倒れても知らねェぞ…(呆)


「弥子ちゃん、夜久斗ちゃん」


後ろから声をかけられ、振り向くとそこには


「刑事さん」


世話になっている刑事の人が2人来ていた


「どうも、聞き込みでお邪魔してます」
「警察も今全力で捜査してるから…」
「そう、一刻も早く」


真剣に、必死になってオレたちを励まそうとしてるのがヒシヒシ伝わってくる


「あ…」
「お父さんを殺した犯人を捕まえるよ」


姉さんは辛そうな顔をひた隠して、場違いな程の明るい口調で話はじめた


「やー、もぉ そんな血眼にならないで気長に待ってますよ」
『オレは別に期待はしてねムグッ』


ありのままを伝えようとしたら、姉さんに手で口を塞がれそのまま急いで連れていかれた


「えらい子たちだね。頑張って耐えてる」
「……耐えれてるのかねェ…(何気に失礼なこと言われた気が)」

































『……』
「……」
『……ハァ…姉さん』
「(ビクッ)な、なに!?」


部屋に入り、ずっと無言だった姉さんに話しかけると、異常にビクついた
なんかショックだ……


『膝、かしてやるから寝とけ』
「え…」
『早くしろ。どーせ座ってても寝れねェだろ』
「…うん、ありがと」


姉さんはオレの膝に頭を預け、寝ころんだ
頭を撫でていたら、すぐにコロッと眠りに落ちた
そのままオレは、朝が来るまで眠らずに姉さんの頭を撫で続けていた

















































「ん…」
『…はよ、姉さん』
「夜久斗?アレもしかしてずっと起きてた…?」
『まァ、寝れなかったしな』


途端に姉さんは申し訳なさそうな顔をして口を開こうとした


「夜久斗、ごめフガ!!」


だから口に手を叩きつけてやった。
姉さんは軽く涙目だ


『オレがやりたくてやってたんだ、謝罪ならいらねェ』
「あ、ありがと!!」
『おう』


とりあえず、赤くなってしまった姉さんの目を冷やすために、タオルを濡らして持っていってあげることにした




























ジャー


『フゥ……』


タオルを桶に突っ込んで、水を出しているあいまに、煙草を吸っていた








脳裏に浮かぶのは、無数の刃物を身体にはやし血まみれで死んでいる親父の姿だった。

喉や心臓など、急所をひとつきにされた上に
乱雑に刺さった刃物の数々。

目を見開き苦痛に歪む顔、そしてなんの光も灯さない、黒く無機質な目。

今思えば、なぜそこまで観察し冷静でいられたのかも分からないまま、オレは気を失ったのだった

気を失い目を覚ました頃には、母さんや姉さんもいて、オレは第一発見者として事情聴取
を受けていた

そしてそのまま、ろくに親父の死を悲しむこともできないまま葬式になってしまっていた


『…ハハハッ、なンつー娘だオレは。…親が死んだってのに、涙一つ見せねェ薄情モンだとはなァ……』


自嘲気味の声だけの笑い声をあげて、水に浸されたタオルを絞り、姉さんのトコへ向かった





























『姉さん、タオル持ってきた…ぜ…?』
「や…夜久斗…」
「ほう…」


部屋の中には、姉さんともう一人背の高い男が立っていた
男はかなり身長がデカくて…カラフルな髪の毛だった

全身は金髪で前髪は黒、後ろ髪になるにつれて先は完璧にエメラルドグリーン
目も同様にエメラルド色だ
しかもスーツは青色という珍しいもの


『客…って訳じゃねェよな』


何よりも異質なのはただった
なにもかもが空腹に満ちていて、難易度の高い謎を求めている
もはやこれは、人間のレベルをはるかに凌駕していた


『…アンタ、人間じゃねェだろ?何か用か?』
「ほう、わかるのか…」
「え、夜久斗なんでわかったの!?」
『オレがプラス以外の心が読めンの知ってるだろ?ソレ使っただけだ。…で?アンタはオレん家の謎でも喰いにきたのかよ?』

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