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総会に参加

あれからまた何ヶ月かたって、やっとリクオもあーだー言えるようになった

うん、そう思うとやっぱあの歳で話せた俺はおかしかったんだなまあしょうがない!

俺はというと、頑張って僅かにハイハイできるようになってた

でもまだ親父が過保護過ぎて許してくんない
すぐに見つけ出されて抱っこされちまう

まだ早いんだと


「鯉吹様〜、氷麗ですよ〜」
『あーうー』


そうそう、今日は氷麗と河童と納豆小僧が遊びに来てくれた

河童と納豆小僧は、どうしても言いにくくて
かぱー、となとー、になってしまった

でもなんか満更でもなかったからそのままだ

四人で遊んでたら、廊下から毛倡妓が顔を覗かせた


「あら氷麗、今日総会なのに準備しなくていいの?」
「若菜様から鯉吹様とリクオ様の面倒見てくれって頼まれてるの!だから後で行くわ」


え、なに総会あんの?
なにそれチョー行きたい!!
牛鬼とか狒々とか木魚達磨とかみたい!

ハイハイで行けるかね、あ、無理か
俺総会どこでやるか知らねぇし

ま、いいか取り敢えずハイハイして遊ぼう

仰向けからうつ伏せにかえると、目の前に河童がいたから河童を目指すことにした


「きゃーっ!可愛らしいです鯉吹様!!」
「こっちだよ、鯉吹様〜」
『あー、だっ!』


どうにかして河童のトコまでたどり着くと、
慣れた手つきで抱き上げてくれた

水かきがあたってなんか変な感触だけど、
たどり着けた達成感がハンパないからいいや


「あ、二代目!どうしたんですか?」
「ちょいと総会前に息子の顔を見にきたのさ。なんでぃ、リクオはま〜た寝てんのかい?」


親父がまたふらっと入ってきてリクオの頭をひとなですると、河童の手から俺を抱き上げた

あー、なんだかんだで親父の抱き方が一番好きかもしんねぇ

すっげー安心すんだよなー

日頃からぐーたらやってる道楽息子の放蕩息子じゃーとかじじいが言ってたが、かなり肩こってんな親父

毎日毎日出入りだなんだって大変なんだろーなー。お疲れさん親父

お疲れーの意味を込めてギュッと抱きつくと
親父も手加減して抱き返してくれた


「総大将ー!どこですかー!!」
「チッ、もう総会の時間かい」


遠くからカラス天狗の声が聞こえた
親父はなんか不貞腐れながらここにいるぜーなんて返している


「ああ、こんな所にいましたか!さあ、総会が始まりますぞ!!」
「えー、少しくれぇ遅れたっていいじゃねえか。なあ鯉吹?」
『めーっ!』


そりゃダメだろ、大事なことだったらどうすんだ親父よぉ

息子に構いすぎてて大事な決定できませんでしたーなんて洒落になんねぇぜ


「仕方ねえ、さっさと終わらせてくるかね」


そう言って俺を氷麗に渡そうとした


『やーっ!』
「鯉吹?」
『やーっ!なのっ!』


俺も総会に行きたい!連れてって!

親父の服を掴んで意地でも行くもんかと張り付いてたら、親父に肩を叩かれた


「怖えやつが沢山いんだ、お前さん泣いちまうぞ?」
『んっ!』


それでもいいんだよっ!行きてえの!

思いっきり首を縦に振ると、親父はやれやれといった調子で立ち上がった


「そ、総大将?まさか連れていくおつもりで?」
「仕方ねえだろ、行きてえってんだから。泣いちまったら若菜に直行だが」



おお!許してくれたよ!!
親父ありがとう!マジで感謝するわー

お礼の意味を込めてまたまたギュッと抱きつくと、今度は額にチュッと唇を落とされた

イケメンめ、様になるねえ
そんじゃま、総会にレッツゴー!!























































ガヤガヤと廊下まで響く話し声

この襖1枚隔てた向こう側に大妖怪たちが鎮座してると思うと、やっぱりちょっとドキドキしてきた

でも、一つ目が大丈夫だったからきっと平気だろ
よし大丈夫、いけるいける

俺が自分に言い聞かせてるなんて少しも思ってもみなかっただろう親父は、簡単に襖を
開け放った

その瞬間シーンと静まり返る室内

その原因はどう考えても俺だった
だってホラ、どこ向いても妖怪が俺の事見てんだもん

とりあえず宜しくねーってことで、
めいいっぱい笑って大きく手を振ってみた

そしたら益々妖怪は固まるわ目をかっ開くはで軽くこっちの方が恐怖だ

でも、そこで声を出すのが我らがぬらりひょんだ


「なんじゃ鯉伴、鯉吹連れてきちまったのか」
「おう、構やしねえだろ?こいつら前にして泣くどころか笑って手まで振ってらあ」
「そうじゃなあ」
親父とじじいはケラケラ笑いながら上座に座る

うん、でも気付こうな
ここの幹部はぬらりひょん、初代からの付き合いなんだろ?まあ多少は若いのもいるかもしんねぇけどよ

で、初めて会うやつもかなりいんのよ、
てこたぁ、幹部は山吹乙女のこと知ってんだろ?

山吹乙女そっくりの俺なんか見たら皆凝視するに決まってんじゃねぇかあぁぁあ!


「初めて見るやつもいるだろうが、俺の息子の鯉吹だ。双子の兄貴にリクオもいる
おめえら、歓迎してやんな!!」


親父の一声に今まで静かだった妖怪が一気に
喋り始めた


「ほぉ!これが二代目の!!」
「いやぁ、もう総会に出席とは将来有望ですなあ」
「我らを前に泣きも喚きもしないとは!」
「そればかりかホレ!今も笑っておられる」


なんか取っ付きにくいなあとか思ったけど、
全然いい奴らじゃん、妖怪って
なんかすげー安心したわー

あ〜はいはい、皆宜しくねー

所狭しと伸びてくる手や顔にペタペタ手をつけたり握ったりと笑いかけながら挨拶紛いのことやってると、しばらくして親父に追い払われた

やっと静かになったことろで、今日の本題が出された

一気に真剣な顔付きで話を聞き出す幹部とじじいと親父たち

こうなってくると俺はずーっと暇なもんだから、雰囲気だけは壊さないようにして、
キョロキョロと周りを見渡して知っている
顔を探してみることにした

あ、いた!

右側の中央に一つ目と狒々がいて、左側の前の方に木魚達磨が座っていた

で、真ん中からなんか視線感じるなーと思ってみたら、牛鬼とバッチリ目が合った

親父ではなく俺を見ている牛鬼

口でなにか語るわけでもないし、行動で示してもいない
でも、俺を見据える目が何かを語っている
訴えかけている、想っている

……あぁ、そうか

牛鬼、お前はホントに奴良組を愛し、ぬらりひょんに忠誠を誓ってんだなぁ

思えば、窮鼠も捻眼山の時も全てそうだったもんな

お前も元々は人の身。どれほどに強かろうと人間が悪鬼に勝ちうる術はないに等しい

人間を捨ててまで魔道に落ちた牛鬼
お前からすれば、リクオの生き様はなんて滑稽で無様なものだったろう、どれほど苛立たしかったんだろう

そんなことが起きぬように、自分が愛した奴良組を自分を子だと、親になってくれるとまで言ってくれたぬらりひょんに恩義を報いるために、 常に次のことを考えてるんだな

まったく、大した忠誠心だ
ほんと、尊敬するよ

俺は小さく牛鬼に手を振っていた
まだろくに頭を下げることも、喋ることもできないから、これぐらいの意思疎通しかできないけど、

思いは伝わって欲しいなあ

牛鬼も手を振る俺に気付いて、かなり驚いてたみたいだった
でも、動揺が小さいぞ

そんなこんなで俺が牛鬼い一方的に親睦を深めていると、親父が総会を締めていた


「ーーと、今回はこんなもんだな。よし!おめえら、宴だ飲んでけ!!」


親父が締めたとたんかなり盛り上がった
多分酒が飲めるのが嬉しいんだろうな

俺はというと、いつの間にかまーた親父からじじいの腕の中に収まっていた


「どれ鯉吹や、儂の部下どもに挨拶と行くかの?」
『あー』


おぉー、マジでやった!
誰からいく?誰から誰から?
じじいが見えないように抱っこするから全然前がみえねぇんだけど!


「おお、そうじゃ牛鬼!」


よりにもよっていきなり牛鬼!?
なんでだよ!


「お主総会の時牛鬼のことみておったろう?ほれ、存分に話せ」
『あうー』


見てたのかよ!?
アンタ真面目に話聞いてたんじゃねぇのか!?


『ぎゅー…きっ!』


もうこうなったら思う存分話してやろうじゃねぇか!!
これからよろしく牛鬼!


「鯉吹や、こやつは牛鬼と言っての、儂の代から奴良組に仕えてくれとる奴じゃ」
『にゅら…ぐぅみ?』
「まだ鯉吹にはちと難しいかのう」


じじいに頭をグリグリ撫でられた
牛鬼も微笑ましげに見守っていたが、俺が手を伸ばして抱っこを要求すると、
じじいに手伝われておっかなびっくり俺を抱っこしてくれた


おお、さすが武闘派
筋肉のつき方が半端じゃねぇや
刀振るったらこんな筋肉つくのかな
俺もこんなふうになれっかなー
いやぁ、これからが楽しみだ

で、ここで唐突に牛鬼とじじいが盃を交わしていた時の情景が思い出された

確か、じじいが牛鬼にお前の親になってやるとか言ったんだっけなー

てことは、親父と兄弟?
なんかすげーことになりそうだなその家系


『ぎゅーきっ!ぎゅーきっ!』


名前を呼びながらポンポン胸元を叩くと、
牛鬼とじじいがなんだなんだと俺をしっかり見てくれた

で、牛鬼をみながらじじいを指さして


『ぎゅーきっ!の、とーしゃんっ!』


って言ってみた
一瞬二人はなんのことだと惚けたが、直ぐに
盃を飲み交わした時のことを思い出して
また直ぐに俺を見つめた

だから俺は今度はニッコリ笑って言った


『ぎゅーきっ!の、とーしゃんっ!』


何度でも言ってやんよ、アンタだって掛け替えのない家族だって思い知らせてやる

そだ、もう一個言わねぇと


『ぎゅーきっにゅら…ぐ、ぅみしゅきーっ!』


ハッハッハ、二人して固まってやんの
ざまあみろ〜!


「総大将が…私の親だと?」
『あぃっ!』
「私が、奴良組を愛していると?」
『あいっ!!』


今度こそ開いた口が塞がらないって感じで
二人はあんぐりだ

ま、そりゃそうだよな
こんな産まれたばっかの餓鬼が遥か昔の二人で交わした盃での約束を知ってんだから

フハハ、もうこの際神童でもなんでもなってやろうじゃねぇか

こちとら精神年齢はかなり上なんだよ、だからもうとても餓鬼とは思えねぇ発言滅茶苦茶言ってやらぁ!


「ったく…本当にお主は大物じゃのう…」
「…これも総大将の血でしょうか」
「ふぅむ…儂はこんな聡明だった記憶はないわい」
「天性の才能…とでもいいましょうか?」
「この頭の良さ、大胆不敵さ、…もしかしたら、そうかもしれんのう?」


……やっべ、どんどん内容がマズい方向に行ってる
もうなんか危険だから次行こうぜ、次!


『じーじっ!つぅぎっ!』
「ん?おお、次に行くか?」
「では、私はこれで」
「うむ」


牛鬼はやること終わったから帰るみたいだった
なんかちょっと悲しかったから、小さく手振っといた


『またね!』
「ああ…またな、鯉吹」


おおお〜!
ちゃんとしゃべれた!!
しかも牛鬼が返してくれた!名前読んでくれた!なんか地味に嬉しいー


「ほれ鯉吹、狒々じゃよ」
『あーっ!!』
「キャハハ、鯉の坊の坊は元気じゃねえの」


でっけえぇ!!
なんメーター!?なんメーターあんの!?
狒々チョーでけえんだけど!
抱っこして!つかもつ肩車して!

必死になって手を伸ばしてたら、狒々は直ぐに抱き上げてくれた


『きゃーっ!あいーっ!』
「おうおう、元気だな鯉吹」
「キャハハ、高ぇか?鯉の坊の坊」
『あいぃっ!!』


やっべぇ、なんて爽快な気分!
前世でもこんな高く抱いてもらったことねぇよ

これ、このまま高い高いされたらどうなんだろ、室内でやったら確実に天井にぶつかるな
外でやったら…かなり怖いかもな、止めとこ


『あう、あう』
「ん?どうした鯉の坊の坊」
「狒々…ややこしいから止めんか?その呼び方は」
「そうだなあ、コイツが名を呼ぶに見合う男の子になったら呼んでやらんでもない」
「そうかい…」


狒々に認められたら、俺なんにだってなれる気がするなぁ
なんか女作って餓鬼産むまでとか言わねぇよな?絶対無理がある気がする

そんなことより!肩車して!
なんかもう自力でジリジリ登ってるけど、
比例してズリズリ落ちてるから意味ねぇんだけど!!
ああぁあ、肩から落ちる!上げて!
狒々頼むから上げて!!


「なんじゃ、肩に登りてぇのかあ?」
「狒々、肩車じゃろ。支えんと落っこちるぞ」
「おおっと、そりゃいけねぇ」
『ぅあ〜っ!』


漸く肩車をしてもらって、部屋を一望した
俺いま一番でかいんじゃねえか?
おぉー、すげえな色んな奴のつむじが見える

あ、一つ目だ おーい!!

一つ目に手を振ったら、すぐに気がついて振り返してくれた

やっべ、なんか煙管吹かしてるとカッコよくみえんだな

お前ホントはカッコイイのになんであんなことばっか言ってたんだよ
時代の流れってのは怖いねえ
闇が薄まると、警戒心とか野心とかも薄れていくのかねえ


『ひひーっ!だこ、だっこ!』
「キャハハ、鯉の坊の坊は要求が多いじゃねえか、ホラよ」
『あいがとー』
「キャハハ、おおーどう致しまして」


沢山狒々に遊んでもらったところで、またじじいにバトンタッチ

牛鬼の時みたいにバイバイして次はどこに行くのや
さっき一つ目に手振ったから一つ目がいいな


「鯉吹、一つ目じゃぞ」


きたーっ!!
一つ目だ、さっきぶりだな!
でも久々にちゃんと話すよな?
わーい、カリカリポッポー


『ひとちゅー』
「おお鯉吹様、久しぶりじゃ」
「なんじゃ、知っとったんかい一つ目」
「ええ、まあ」
『ひとちゅー、だっこ!』
「はいはい」


聞いて驚け、なんと一つ目見た目によらず
子供好き!!まぁだからこそ苔姫になつかれたんだろうなー

いいなあ苔姫、今度見に行こう
つか、一つ目に連れてってもらおう

一つ目に抱っこされてると、煙管から煙草の匂いが立ち上ってきた
思わず気になって煙管に手を伸ばすと、
スルッと簡単に煙管が俺の手に収まった

そのまます吸ってみようかと口に近づけると
パシッと誰かに口と手を押さえられた


「りりり鯉吹様!?なにをしとんじゃ!?」
「いかんぞ鯉吹!そんなもの吸っちゃいかん!!」


言わずもなが犯人はじじいと一つ目で、
そりゃまあ止めるわな
産まれたばっかの餓鬼が煙草吸おうとしてんだから

冗談だからそんな焦んないで、大丈夫だから
一応心配かけたから謝っとこうかな


『めんなしゃい……』
「うむ、わかってくれたならいいわい。次からやっちゃいかんぞ?」
「鯉吹様、もう二度とやらんでくれ…」
『うぃ…』


あ〜、なんか予想以上に心配かけちまったみたいだ
頼むからもうへこまないでー

二人にギュッと抱きつくと、すぐに機嫌をなおしてくれて、一つ目はなんか若干浮つきながら去っていった


「さて、次が最後かの」
『あーい』


誰だろ、カラス天狗はいつも会ってるし、
ぜんにはなんだかんだで遊んでもらってるし


「木魚達磨、ちといいか?」
「総大将、なんで御座いましょう」


木魚達磨か!!
そうかすっかり忘れてたぞ本家の相談役!


『だうまー』
「これはこれは!鯉吹様では御座いませんか」
『だこ』
「だこ…?」
「ハッハッハ、木魚達磨コイツあお前さんにだいてもらいてえんじゃよ」
「なんと…私などで良ければいくらでも抱き上げてさしあげましょうぞ
『うあー』


木魚達磨って予想通りか硬さだよなー
あのかたっ苦しい敬語どうにかなんねえかな

ま、木魚達磨に抱っこしてもらえるだけすげえか

……頭、木魚なのかな

叩いたらポンとか鳴んのか?

気になるなあ、でもなんか自殺行為な気がしてならねぇからやめとこう

あーー、なんか沢山周りすぎて疲れた
もうそろそろ親父のトコに戻りたい
つーか寝たい、戻らせて!


『とーしゃんっ!じーじっ、とーしゃんっ!』
「ん?鯉伴のトコに戻りたくなったのかのう…どれ、そろそろ行くか」
「では、総大将これで。鯉吹様もまた何時か」


うん、またねー木魚達磨
ごめん、声出すほど元気じゃねぇんだ
許してなー


「おーい、鯉伴。鯉吹がお呼びじゃぞ」
「ん?どうしたんだい鯉吹」
『とーしゃん…ねむ…』
「ああ、もう眠いのか。仕方ねえなあ、先に布団に行くかい?」
『ん、とーしゃも…一緒…』
「わあってらあ」


親父に背中をトントンされたら、すぐに瞼が落っこちてきて、すぐにストンと眠った








ーーお披露目会でした

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あきゅろす。
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