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ぬらりひょん、登場


親父と対面を果たし、また寝てしまった俺は
次目が覚めた時には誰かの腕の中にいた


「お?目が覚めたか、鯉吹」
『あう〜』


おぉ〜
やっと会えたよ、心待ちにしてたよっ!

何故か俺を抱いていたのはお爺さんのぬらりひょんではなく、若かりし頃のぬらりひょん

やっべぇ、アンタもイケメンだな!!

ニヤリと笑いながら俺を見やる姿に、思わず感嘆の声を漏らしてしまった


「不思議じゃのう、お主の傍におると力が湧き出てくるようじゃ。これも血かのう?」
『うぅ〜』


力ってことは妖力だよな?そうだよね?
えー、なんかすっげえ厄介なモン持ってんのか、俺?
でも、血ってなんだ?
ぬらりひょんは妖怪だから、珱姫の治癒能力のことか?
うーん、でもそれって関係あんのか?


『その容姿で産まれたのも、運命なのかもしれんのう…』


え、その容姿ってどんな?
運命?なに、誰かと似てんの俺
チョー気になる!鏡みたいぃ!!
自分の顔をペタペタ触っていたら、ぬらりひょんはその行為に気付き鏡の前まで連れていってくれた


「ほれ、これがお主の顔じゃ」
『……』


……え、
……………ええぇ、
……………………えええぇぇぇぇ!!?

見えた顔は、大きな二重の真っ黒の瞳に、これたま漆黒の髪。しかも真っ直ぐ

加えて病的なまでに真っ白い肌に、女のように長く多い瞳を縁取る睫毛

儚い雰囲気を纏わせた

見目麗しい絶世の美女



明らかにこれは、







山吹乙女そのものだった








「……山吹乙女と、いったかのう。お主にそっくりな女じゃ」
『あ…』
「鯉伴の奴も、酷なことをする…鯉伴の鯉に山吹乙女の吹……鯉吹、お主はあの二人の象徴なのかもしれんのう」


そうか、りふきなんて名前、どうやって考えたんだと思ったら、そういうことだったのか

未だに山吹乙女のことを、忘れられないのか
未だにどこかで生きていると信じているのか

だが、それは望まぬ形で帰ってくる
羽衣狐と、安倍晴明、そして…山ン本五郎左衛門

安倍晴明の反魂の術により幼子の姿で甦り、
山ン本五郎左衛門の左目の、鏖地蔵により
偽りの記憶を植え付けられ更に愛した人を刺し殺してしまい絶望の淵に叩きつけられ
羽衣狐を呼び起こさせてしまった

……なんて、酷いことだろうと思った

愛した人の為に離れたのに、自らの手で愛した人を殺めてしまうとは

どれほどの苦しみを味わっただろうか

どれほどの悲しみを味わっただろうか

絶望の淵に立たされ、羽衣狐に意識や体すら乗っ取られどんな気持ちだろうか

最後にリクオを守ったその姿に、母の姿を垣間見えた気がした

最後には、鯉伴と共に幸せになれたことが、
とても俺には嬉しかった

だから、ごめんね
俺は鯉伴を殺させはしない
だから、二人が会えるのはまだ当分先になってしまうだろうけど、ごめんね

本当は貴女をこんな目には合わせたくない

だから、いつか訪れるであろうその日には、
貴女を絶望の淵になど落とさせないように、
精一杯がんばるよ

貴女のことを鯉伴は愛していた
これは貴女のせいではないと
だから、絶対に心を黒く染めてはいけない
貴女を必ず救ってみせるから、
それまで信じて待っていてくれと

貴女に伝えて見せるよ

だから、待っていてね















「……鯉吹?」


いきなり黙った俺に不思議そうに名前を呼んできたぬらりひょんは、鏡越しに俺を見た

うん、ぬらりひょん
俺いま決めたんだ、自分がどう生きていくか
ただの復讐なのかもしれないけど、俺は
この姿で産まれたことに意味を持って生きる

第二の母である山吹乙女の仇を打つために、
山吹乙女の魂を返してもらえるように、
鯉伴を安心させるために、

俺はこの世界で生きていくよ


『あいっ!』
「ハハハハ…なんじゃ、覚悟でも決めたような目をしよって…」
『あいっ!!』


決めたんだっ!
て言い返してやったら、ぬらりひょんは
目を丸くさせて驚いた


「ハハハっ!!そうか、覚悟を決めたか!
……なんの覚悟か知らんが、決めたなら守り通せ、それが男ってもんじゃぞ」
『あーいっ!』


元気よく返事したら、また頭を撫でられた
ガッシガシとそれはもう容赦なく

それすらもおかしく感じて、やっぱりキャッキャとぬらりひょんと笑った

ああ、そう言えばぬらりひょんの呼び方どうすっかなぁ…もうじじいでいいかな
よし、じじいで行こう

ぬらりひょん…もといじじいの呼び名も決まったところで、今日はじじいとあそび尽くすとこに決めた俺は、

数分後に来た親父とも混ざりもみくちゃにされてじじい親父もろとも母さんに怒られたのは御愛嬌だった










ーー鯉吹、覚悟を決めました

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