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第2Q


ーーー数日後、バスケ部員が外周を終え、体育館に向かっていたとき、たまたま帰宅部だろう男子生徒一人の横を通ったとき、黒子がピタリと足を止めた


「どうした、黒子?」
「……」
「どうしたの?黒子くん?」


黒子が先輩の言葉を無視するなど、到底分からなかった部員は、突然のことに驚いた
そのまま黒子は前を向いたまま喋り始めた


「……お久しぶりです、栞鳳さん」


栞鳳、その名前が出されたとき、部員はなんのことかわからず首をかしげたが、いま横を通った男子生徒がその場に止まったのを見て
彼の名前なのだとわかった


『……久しぶり、テツヤ』
「……」
『半年ぶり、か?お前がバスケを続けるたァ、思わなかったぜ?』
「……ボクも、あなたはもっと強い所に行くと思ってました。まさかこんな無名の新設校に来るとは…」
『俺はバスケを続ける気は無かったからな』


二人の会話が余りにも重々しく暗かったため
思わず監督である相田リコが声を掛けた


「えっと…取り敢えず黒子くん、その子は」


黒子は栞鳳に目線を投げかけると、了承の意味を込めた頷きが返ってきた


『栞鳳さんは、元光帝バスケ部一軍の同級生だった人です』
「「「えええぇぇぇぇーー!!!??」」」


黒子が言った言葉に間髪入れず、全員が叫び返した
栞鳳は、苦笑いをしながら肩を竦めてみせた


『どうも、テツヤと同級生だった白雅栞鳳です。……まァ、以後よろしく』
「えっ、嘘でしょ…!?」
「光帝中の?一軍??」
『まァ、』
「スゲー」


リコはまじまじと栞鳳を見直した
サラサラと流れる銀髪に、黒真珠のような澄んでいて吸い込まれそうな瞳
涼しげな顔立ちに、目元にある泣きぼくろが
妖艶さをにじみ出させていた
自分をガン見するリコに気付いた栞鳳は、真っ赤に潤った唇を僅かにあげて笑った


『俺の顔に、何かついてますか?先輩』
「ハッ!?な、なんでもないわ!!」


とにかく!と、リコは改めて栞鳳に向き直り


『栞鳳くん、だっけ?君、バスケ部に入らない!?』


勧誘していた
































「って、ハァ!?お前何言ってんだ!?」


日向がリコに向き直り目を見開いて言った


「だって、元光帝中の一軍よ!?」
「だからってなぁ…!」
『ハハハ…バスケ部、ですか』
「ほら見ろ、困ってんじゃねーか」
『いえ、そうではなく』
「え?」
『こんなものを付けてる生徒が、部活に入れないでしょう?』


栞鳳は自分の左耳を強調してみせた


「ピアス…」
『右耳にもありますよ?』


右耳にはカフスチェーン付きのピアスをし、
左耳にはシャラシャラとなる吊り下げるタイプのピアスをしていた



「確かにそうだな」
『でしょう?』
「では、そのピアスを外したら入ってくれますか?」
『悪いなテツヤ、これは極力外したくねェんだよ、諦めてくれ』
「う〜ん、……なら、外さなくていいわ!」
『「は?」』



思わず黒子と栞鳳の声が被った
声を出さなかったほかの部員も、口をポカンと開けてあほ面をさらしている


「何言ってんだ…お前は…」
「ウチにいる時は強要しないわ、他校との試合の時もなんとかしてあげる。流石に全国レベルの大会は難しいけど……どうにかするわ!!だから、入ってもらえない?」


頼むから入ってくれ、という思いがヒシヒシと目から伝わってきた
目は口ほどに物を言うとは本当だな……

さて、どうしたものか
高校では、二度とあんな体験をしたくはないし、わざわざ彼等から逃げてまでここに来たというのに、自ら戻るというのは、少し気が引けるなァ……


「栞鳳さん、ボクはこの人達とこのチームで彼等を倒します。そして、このチームを日本一にすると誓いました」
『……』
「栞鳳さんも彼等のやり方に疑問を抱いていた筈です。… ボク達のやり方で彼等に勝ちたいんです、だから……一緒に、バスケしませんか?」



あれ程奴等と共にいて、血が滾らない、絶望のバスケをしていて、最後には悲惨な事をされてもなお、お前は立ち向かうのか……

そんなに、このチームは心地がいいのか?
今のお前には、光がいるのか?
ここに入れば、答えは見つかるのか?

………そうだな、お前がここまで信頼するなら









『…入って、みようか……』
「!」
「じゃあ…!」
『宜しく、お願いします』
「「「よっしゃああぁぁぁぁ!!!!」」」


栞鳳が入部を決意すると、結局は全員が嬉しかったらしく、飛び上がって喜んでいた


「栞鳳さん、入ってくれてありがとうございます」
『いや、お前のお陰だ。これからまた宜しくな、テツヤ』
「はい」
「なぁ、お前」
『?』


テツヤの横に立っていたのは、大柄な男だった
見たところ、彼が新しい光だろう
なんだか虎みたいな奴だな、虎男とよぶか←


『なんだ?』
「お前強いのか?」
『まァ…試合には出てたからなァ』
「そうか、じゃあ…」


虎男はかなり獰猛な笑いを見せながら、一歩
こっちに詰め寄ってきた
そのまま少し下にある俺の顔を見下ろしながら


『ワンオンワン、しようぜ』


と、のたまいやがった






















「じゃ、はじめるよ!」


所変わって、ここは体育館
あの後何故かリコ先輩(そう呼べと言われた)に見つかり、いい機会だから実力も見せてもらおうと言う話になった訳だ


「ルールは二十分間の耐久試合よ!シュートを決めてもそのまま続けていいわ、でも必ず入れてない方が始めにボールを持つこと!
いいわね!?」
「『はい/ッス』」
「じゃ、始め!!」


ホイッスルの音とともにボールが俺の方に放られた


「先に譲ってやるよ」
『へェ…随分自信があるんだな?』
「ハッ、まあな!オラ、さっさと来いよ!」
『……なら、遠慮なく』


栞鳳はそう言うと、その場で腕を振りかぶりボールを思い切りぶん投げた


「はっ…!?」


火神が咄嗟に手を出すも、その手すら弾いてゴールポストの角にぶち当たったボールはそのままネットをくぐった
シーーン、と辺りが静まり返った
が、その短い沈黙を破ったのも栞鳳だった


『おい、早くボールを取れ。まだやるんだろ?』
「ったり前だ!」
『テツヤ、説明宜しくな。その人達ならバラしていい』
「分かりました」


黒子の返事を聞き届けると、栞鳳は火神との
ワンオンワンに戻っていった


「ちょっ、黒子くん、あれなに!?」
「あれは、ストレングスシュートです」
「あ?ストレ……なんだって?」
「ストレングスシュートです」
「なんだそりゃ」
「そのままの意味ですよ、力任せに投げるシュートです。栞鳳さんは、力が強いのでああいうシュートの方が入りやすいそうです。実際、火神くんの手も超えてますし」
「確かに…」
「因みに、範囲は全コートです」
「えええ!?マジで!?」


信じられないという目で部員は二人を見つめた
そのとおりに、栞鳳はどんなに遠くともボールを投げバカスカゴールに入れている


「栞鳳さんは中学に入るまでアメリカで毎日ストリートバスケをしていたそうです。
そのせいで、かなり型破りなプレーをしてしまっていたのが問題になって、今では型にはまったバスケプレーをするように心がけているそうですよ……なおす気はないようですが」


黒子の言う通り、ドライブやディフェンスはある程度型にはまったプレーになっていたが
シュートはまったくの無視である
その内ほかのプレーも崩れていくらしい


「ほかには…あ、今が見所です」


黒子の声とともに全員がコートを見た
火神がダンクを決めようと飛び上がった後ろで、栞鳳も飛び上がったところだった


「…は?」


誰かが声を漏らした、それ程信じ難い光景だったのだ
火神の後ろに飛び上がった栞鳳は、後ろから火神が両手に持っていたボールを弾きボードに当て手中に納めると、そのまま落下しながら、尚且つ後ろ向きのままボールを放り、自分の入れるべきゴールに入れたのだ


「………」
「あ、はい。ちゃんと説明します」


日向と小金井が無言で黒子を見ると、待っていたかのように黒子が喋り始めた


「今のはインシンシアシュート、不誠実なシュートといいます。…どこから投げても入ってしまうあまりの精密さに嫌気がさしてしまい、遊び半分でゴールに背を向けて放ったのが入ってしまったのがきっかけです」
「……なんか、嫌なシュートだな」
「そうですね、実際栞鳳さんも初めは嫌ってました。でも、それも栞鳳さんの才能だと説得させて、やっと認めてくれました。……あの時は大変でした…」
「た、大変だったんだな…」


そその話をする黒子がゲッソリしていたため
伊月が慰めていた


「まぁでも、今みたいなシュートが入れられるのもすごいわよね!!」
「はい、尊敬します」
「…で?まだほかにもあるのか?」
「そうですね…ボクが知っていて後ひとつ」
「なんだ?」
「サイキックアイです」
「…超能力?」
「この単語にはその意味もありますが、この眼には巫女の眼という意味かあります」
「巫女?」
「もしくは、先読みの眼ともいいます。栞鳳さんの目は、空間把握能力に長けていて、ボールが跳ね返った時、リバウンドした時に、どの位置にボールが飛んでくるか分かります」
「なんか…万能だなアイツ」


話が一段落?ついたところで試合をみようとすると、丁度終わってしまったようだ


「ありゃ、終わっちゃった?えーと結果は」
「…」
「………」
「……」
「え、結果は?」
「きゅ…99対……0……」
「きゅっ…!?」
「ぜっ…!?」
「「「はあああぁぁぁぁ!!!??」」」


ちゃっかり叫ばれる前に耳をふさいでいた栞鳳は、黒子の横にいどうしていた


『ここの人はよく叫ぶなァ』
「君が凄すぎるんですよ」
『そうかァ?』
「そうです」
「火神!!0点てどういうことよ!?」
「や、あの…」
「試合前にはあんな大口叩いてたくせに!」
「アイツ力強えし、全然体力切れねえんだよ!…です」
「はあ?……む、言われてみれば」


リコは言われて初めて火神と栞鳳を見比べた
火神は汗だくにも関わらず、栞鳳は汗どころか息一つ乱していなかった


「……かなり体力あるのね」
『あー…俺は、他人よりかなりピンク筋が多いんですよ。だから力もスタミナもあるんですよね』
「…ピンク筋?」
『えっと、赤筋と白筋があるのはしってますか?』
「ええ」
「「………」」
『…説明すると、赤筋は持久力があって力が長時間発揮できるんです。白筋は反対で、短い時間しか力は発揮できないけど、瞬発力に優れています。ここまでいいですか?』
「ああ」
『ピンク筋というのは、この二つの筋両方の要素を兼ね揃えているんです。俺にはそれがほかの人よりも多いから、余り体力が切れることがないんです』
「あー、成程そういうことだったのか」
『はい』
「え??どういうことっスか??」


ほとんどの人が納得した中、火神だけが栞鳳の言葉を理解できずに、首をかしげていた


「要するに、力が強くてスタミナもあり、
体脂肪燃焼効率の良い筋肉が多いんです」
「体脂肪燃焼効率ってなんだ?」
「………」
『沢山喰っても太りにくいってことだ、すぐ腹の中で喰いもん消費するからな』
「あぁ、そういうことか」
「すみません栞鳳さん、ボクの手には余ります……」
『ハハハ、まァ確かにな』


火神のあまりの頭のゆるさに黒子は溜息をついた


『…では、俺はこれで。明日から宜しくお願いしますね』

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あきゅろす。
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