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story、2
『………』


随分、懐かしい夢を見たと思った
こんなにも鮮明なモノを見るのは、何時ぶりだろうか。いや、もしかしたら初めてかもしれない、なにか今日特別なことが起こるのだろうか


『あぁ…確か今日は、昴が転校してくるんだったか。あの女タラシは治ったのか?』


ブツブツと言いながらも、パジャマを脱ぎ捨てズボンを履き、黒いTシャツの上から指定
Yシャツに腕を通した
ネクタイはしない、息苦しいし面倒だ。
上着も着るほどじゃないから鞄に突っ込む
顔を洗って歯を磨き、ピアスとネックレスを付けて家を出た

仁の家に行くと、既に昴と共に歩いていた


「あれ、もしかして遼毅!?暫く見ない内に…不良になったな…」
『黙れ』
「というより、また一段と男らしさが上がったんじゃないのか?」
『褒め言葉だな。お前こそ女タラシは治ったのか?』
「アハハー…どうだろう」


昴は傍目にも分かるほど肩を落としながら言った


『…ま、いいか。仁、俺はやく行かねェとなんねェから、先行くな』
「あぁ」
『じゃ、昴も後でな』
「あ、うん」


昴が返事をするのを聞いた後、ダッシュで学校に向かった









* * *







『だからよォ、新センセー俺は好き好んでやった訳じゃねェんだって』
「アホ、知らんわそんなこと。ええからとっとと反省文書け」
『へーへー』


何故俺が先公に見張られながらこんなモンを書いているのかというと、以前しでかしたことが原因だ

普段から授業に出ずサボってばかりだが、成績はキープしているおかげで何も言われない

けどその日はたまたま、同じ学校の女子と虐めている他校の男共を発見してしまい、
その場の怒りに身を任せて相手をフルボッコ
なんとか警察はまぬがれたがこのザマだ


『…ん、終わったぜセンセー。もう俺帰っていいか?』
「教室にならええぞ」
『チッ』
「舌打ちすなや!そや磁櫻侍、お前のクラスのプリントがあるから持ってき」
「りょーかい」


新センセーと廊下を歩いていると、俺の方に女子が走ってきた


「あ、あの!磁櫻侍さん!」
『…あ?なんだ?』
「コ、コレ良かったら…!!」


女子の手の中にあるのは手作りであろうクッキー、可愛くラッピングまでしてあった


『…コレお前が作ったの?』
「はい!」
『ふぅん…サンキュ』
「い、いえ…!!」


お礼を言ったら、なんか女子は顔を真っ赤にさせて首を左右に振った


『ククク…かァわいいなぁ?ンな顔晒してると喰っちまうぞ…?』


その姿が可愛くて、思わず耳元で囁いてしまった


「っ…!!」
『おっと』


腰を抜かしたのか、足から崩れ落ちる女子を抱きとめると、傍にいた友達に引き渡してやった


『わりぃわりぃ、悪戯が過ぎちまった。あんまりにもお前が可愛いすぎるモンだからよ』
「だだだ、大丈夫です!では、これで!!」


頭を撫でながら言ったら、二人は尋常じゃない程頭下げたりして走ってった


「…お前、ほんっとタラシやな」
『ひでェなセンセー、俺はただ本音と事実を本人の前で言ってるだけだぜ?』
「お前を女かどうか疑うわー」
『どーでもいい。つか、俺疲れたからプリントは後で誰かにやらせといて』
「あ、おいコラ!」
『じゃあなー』


後ろ手に手を振りながらクラスへ戻る途中、廊下で昴たちが、なんかやっていた


『よォ、仁に昴。さっき振りだな、何やってんだ?』
「!遼毅!!」


昴の後ろから抱き込むように顔を覗かせた


「なんだ、慈櫻侍か」
「あ、遼毅先輩だーっ!」
「おはよう、遼毅」


どうやらコイツ等と会っていたようだ。


『はよ、零時、真白、元親』


元親の頭を撫でてやると、真白が後ろから抱きついてきた


「遼毅、りんご食べる?」
『くれんのか?んじゃ貰っとくわ』


切るのが面倒だから、そのままかぶりついた
おっと、汁が


「「………」」
『どうした、お前等』
「…いや〜、遼毅って色気凄いよね!」
『どうした昴、お前大丈夫か?』
「あはは〜…(無自覚天然女タラシ…!!)
………ん、あれ?」


昴が周りを見渡すと、そこかしこで生徒が集まっていた


「…見て…5人も揃ってる…!」
「やーチカちゃんカワイイ〜」
「雪梨くん今日も美しいわ…」
「黒森くん寝ぐせついてる…!さわりたい…」
「ああ〜〜こっち向かないかな〜〜煤原くん…」
「慈櫻侍さんなんて色気なの…!抱いて…!」
「(わ…女子に人気なのか…この5人…)」
「どうか…オレをその足で踏んでくれ煤原」
「(おっと一部男子からも…さすが共学だなー…)」


そこまで進んだところで、漸く雪梨が昴に気付いた


「?…どちらさん?」
「!」
『なんだ、お前等知り合いじゃねェのか?』
「教える前にお前が来た」
『あぁ、そう言う事か』


それならと、昴の背を押して前に出してやった


「仁と遼毅の幼馴染みで転校生の大路昴っていいます、よろしく」
「「…………」」


え、何ソレ?うわぁ、俺もその反応はびっくりだぜ二人共。自己紹介の後無言はキツイって


「…僕は」


お、潔く喋りだした


「1組の雪梨真白。嫌いなものは運動と野菜、好きなものは小動物とりんごと遼毅」
『俺はものか』
「?違うよ」
『ん、ならいい』
「僕は中等部三年の指宿元親です!
えっ、仁先輩と遼毅先輩の幼馴染み!?なら僕らとも幼馴染みみたいなもんですよ!」
「そうそう」
「『イヤ、それはちげーだろ』」
「はは!そうなの?」


昴が笑った、こっち来てから男友達ははじめてだろうから、新鮮なんだろう


「ーおい、お前は俺を見て何か思うことは無いか、大路昴」
「え?…うーんいや…踏まれたいとはちょっと…」
「…何の話だバカか貴様は」
『プハッ!!踏まれっ…!』
「黙れ慈櫻侍」
『わ、わりぃ…クク…』


バタバタバタ…ドン!!


「!」
「きゃっ」


廊下を走っていた女子が運悪く零時に当たってしまったらしい


「ごめんなさい煤原くん…!」
「…廊下を走るなバカか貴様は、死にたいのか」
「…は、はい…
「(えええー!?)」
『あーあ、また零時に当てられたちまったじゃねェか』
「ハッ!だめだよ煤原くん!男なら女子には優しくしないと!」
『(おぉ、零時を叱ったよ)』
「はい、本」
「あ、ありがとう…」
「気をつけてね」
「は…はい!」
『そーそー、次気をつけねェとお仕置きだぜ?美紀ちゃん』
「慈櫻侍さん…!は、はいい〜


女の子は目をハートにして行った


「遼毅…それは心臓に悪いよ…」
『ンだよ、これが俺のスタイルなんだよ』


「…零時先輩を叱った女子、遼毅先輩の他に初めて見た…というか……」
「…零時も気づいてる?」
「当然だろう」
「…仁先輩…もしかすると昴先輩と遼毅先輩がそうかもしれない…!」


キーンコーン


「…お、予鈴だ。昴教室行くぞ」
「え、あうん」
『おー、じゃあまた後でな』
「うん」
「…そうか。ま、頑張ってお前らで確かめろ」
「?何の話?」
「こっちの話」
「ーー昴先輩…じゃあね!」
「またねー」
「うん」


昴達は先に教室に向かった
俺は取り敢えず真白と行こう


『ん、喰い終わったから行こうぜ真白』
「うん」








* * *







キーンコーンカーン


『ん、やべ始まっちまう』
「一緒に体育館移動しない?」
『(お、早速女友達か)』


ドアから中を覗くと、二人の女子と楽しそうに喋っていた


『昴、早く行かねェと遅れんぞ?』
「あ、遼毅!」
「「じじじじ、じ、慈櫻侍さん!!?」」
『おお、お前等も一緒に行くか、ホラ』


二人の手を取ってやると、ワタワタし始めた


『可愛いー、昴ゥ俺の両手この子等に貸したからお前ナシでいいか?』
「アハハ、いいよ」
『じゃ、行くかお姫様?』
「「は、はぁい」」


遼毅がニヤリと上から流し目で見下ろすだけで効果的面だった
ほんとによくやるなぁ、遼毅は















「あ、遼毅先輩と昴先輩…どうしたのその顔…」
「ん?おお元親くんに雪梨くん」
『よォ』
「イヤ、ちょっと決意表明をね。あれ?中等部の始業式もこっちなの?」
「ううん」
「昴先輩と遼毅先輩に話があって」
「私と遼毅に?」
「あ、じゃあウチら先行ってるね」
「りんごのにおいがする」


いきなり真白が顔を覗かせかきた


「大路さんと遼毅もだ」
「さっきもらったアメかな、いる?」
「やった」


真白がにこっと笑ったのがかなりきたみたいだ、顔真っ赤


『じゃ、名残惜しいけどまたな』


チュッ


「「〜〜〜〜///////」」


今度こそ二人は体育館に向かったが足がフラフラしていた、やり過ぎたかな…


「遼毅…ちょっと加減しようよ…」
『いや、頬と額なら平気かと思ったんだ』
「…わー真白先輩のフェロモンにやられないんだ…」
「!あっそうか!イケメンなんだっけ!ごめん興味なくて!」
「…」
『謝られても困るだろ、ソレは』
『でも、王子たちにときめいてる女の子たち見るのは好きだな、かわいいし』


そう言ってる昴の顔はとても嬉しそうだった
俺的には、昴みたいに逆に男慣れしてない奴はかなり可愛いと思う、弄れるし


『…ったく、ほんとソレばっかだな?お前。
言っとくが、俺から見たらお前も十分女らしくて可愛いよ、髪伸ばしゃいいのに』
「ありがと」


ほら、その照れた顔だって可愛い
なにが自信ないんだか、全然OKだろ


「ーー先ぱ………」
「あ、仁と煤原くん」


零時はこっちを見ると真っ先に元親をみた


「おい指宿、始業式サボる気か」
「ちゃんと行きますかよー」
『(……ん?)』


ふと振り返ると、少し離れた階段の上に、二人の男子生徒がいた、おそらく2年生だ
一人の手にはバケツがあり、階段の下には丁度俺たちを見ている女子が何人かいた








《ファンの女子にあたったりする人がいるらしいの》








『チッ、(間に合うか!?)』


走り出そうとしたとき、一足先に昴が飛び出した


「!?え昴先……」
『あのアホ…!』


まさか気付いてるとは思わなく、一瞬止まってしまった


バシャッ


一歩及ばず、昴は女子を庇って水浸しになっていた


ざわっ……


『…やろう…』


「ーーごめん、うしろちょっと濡れちゃったね。向こう行ってた方がいいよ」
「え、あ、あの…!」
『いいから、こっち来てろ。お前も濡れてんだろ?』



庇った女子を引き寄せると、持っていたタオルで背中を拭いてやった


『オラ、これやるから風邪引かねェようにしろよ?』
「あ、ありがとうございます!」
『おゥ、早くいきな』


女子を送り出し昴の方を向くと、何やら言い合っていた


「王子気取りかよ、男女が!」


2年の男がそう言い放つと、俺の目には昴が少し悲しい顔をした気がした


『ありえねェ…』


二人をぶん殴ってやろうかと歩き出した時、
叫んだ方の男が手に持っていたバケツを勢い良く昴に投げ飛ばしていた
昴は気付いていないのか、動けないのか、その場から離れようとしない


『クソッ!』


全速力で走って昴を庇うと、頭に思い切りバケツがぶち当たった


ガンっ!


『痛ってェ…』


ボタタッ……


不意になにか液体が垂れてきたと思って拭うと、手が真っ赤に染まった
どうやら、頭か額のどちらかを切ったらしい
切ったところが悪く血が止まらない


『あークソ、昴怪我は?平気か?』
「遼毅は!?大丈夫!?ごめん、私をかばったせいで…!」
『あー、平気だからンな悲しい顔すんな。
ほら、上着貸してやる』



それより血がつくといって昴を遠ざけると
手で押さえた
生憎タオルはさっきの1枚しか持ってなかったからな
ふとあいつらのほうを見ると、元親が一人をぶん投げて零時がなにやらドSな発言をしているようや気がした
昴にはしっかり仁が上着を貸していた
良かった、俺のだけじゃ不安だったからな
……おぉ、なんか顔赤くしてんぞ、やっと春がきたかー?
やっべェ、頭フラフラする……


「遼毅、大丈夫?ここ押さえてあげる」
『ん?…あぁ、サンキュ』


いつの間に近寄ったのか、真白がタオルで頭を押さえてくれた


『っ…もう平気だ、自分でやる』
「……ホント?じゃあ一緒に保健室行こう?」
『おー、わりぃな真白、付き合わせて』
「丁度僕たちも用事あるから」
『そうか(僕たち…?)』









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