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第二夜




大振りの雨が降っている










大きな教会のすぐそばにある墓地
そのひとつの墓の前に、一人の青年か立っていた



墓に刻まれている名前は、藤本獅郎

青年ーー奥村燐の親代わりだった男性の名前
藤本獅郎は、息子の燐を守るために、魔神に乗っ取られた身体を自ら手放し、自殺した

全ては、息子の為を思ってのことだった

燐は、電話をするようにと言われていた藤本獅郎の友人へと電話をかけた





…プルルルルッ プルルルルルル プルルル

プルルルルルッ プルルルルルッ……プッ……


呼び出し音が切れると、周りに顔の半分を布で隠し、同じような出で立ちをした者が大勢燐を取り囲んでいた

「な…」

「はじめまして奥村燐くん」

驚いて声を失っていると、唐突に声を掛けられ、全身ピンクだらけの服装に身を包む男が
いた

「私はメフィスト・フェレス
藤本神父の友人です
この度はお悔やみ申し上げる」

「お、お前ら…祓魔師か…?」

「“正十字騎士團"と申します」

メフィストと名乗ったその男は、さらに自分たちが祓魔師であることもつげた

「…ジジィはお前が保護してくれるっていってたぞ」

「私はこれでも名誉騎士…責任ある立場でしてね、公私混同はしない主義です
貴方はサタンの息子、人類の脅威となる前に殺さなければならない」

メフィストは無慈悲にもそう言い放つ
その目に一切の動揺は見られなかった

「貴方に残されている選択肢は二つ」

「大人しく殺される」

か……

「我々を殺して逃げるか」

か……おっと、

「自殺という選択肢もありますな?」

燐が顔をしかめ唇を噛み締めて苦悶の表情を浮かべる中、メフィストは淡々と、いや、どこか嬉しそうにも聞こえるように言う

『もう一つ…俺が燐を連れて逃げる、って選択肢も入れとかねぇとな?』

場違いな場面にも関わらず、心地よく溶け込む凛とした声

メフィストの後ろには、全身を黒い衣服で固めた女性、いや少女が立っていた

「…緋璃?」

燐がポツリと名前をこぼすと、それを聞き取った少女はうっすらと微笑んだように見えた

「…これはこれは、緋璃さん
お久しぶりじゃあないですか」

『久しぶりだな、メフィスト
早速で悪いが、ソイツは俺の弟分だ
勝手に殺されちゃあ困るんだよ』

飄々としていて、無表情な顔からは何も読み取ることができない
何故彼女が燐を庇うのか、燐にすら、それはわからなかった

「おや、随分と執着していらっしゃる」

メフィストも負けじと言葉を返す

『…まぁ、取り敢えずは燐の返事を聞いてみようじゃねえか
意思が硬ければ、俺は何も言うまいよ』

緋璃はそう言うと、メフィストから目を離し
燐に目の焦点をしっかり合わせた

『言ってみな、燐』

「…しろ…」

一度目は、声が小さすぎて聞き取れなかった

「仲間にしろ!」

二度目にしっかりと言い放った言葉は、メフィストをびっくりさせるのには十分だった

『プッ…メフィスト、どうした、その顔は』

必死に笑いを我慢しつつ、俺はメフィストに聞いた
奴は、目をこれでもかってくらい開いていた

「お前らがどういおうが…俺はサタンとか…
あんな奴の息子じゃねえ!!俺の親父は…
ジジィだけだ…!」

燐は、僅かに目を涙で潤めながらも言い切った
これは、俺も素直に嬉しいと思った

「祓魔師になって…どうするんです?」

「サタンをぶん殴る!!!」

空気がビリビリとなるほどの大声で言った

『「フッ、フフハ、ウハハハハハ!!」』

「??は…」

まずいまずい、メフィストと一緒になって笑っちまった

「グハハハハ!!ヤバイ…これはいい…!
久々にキました!ハハハハハ!」

「何がおかしいんだよ!」

憤慨だと言わんばかりの表情で見てきた
燐には悪いが、こりゃ傑作だ…!!

「ハハハ、正気とは思えん!」

「正気だ!!」

『フッ、ハハ…メフィスト、決まりだな?』

「ええ、もちろん…!
ククク…サタンの息子が祓魔師…!!」

メフィストがもうひとしきり笑った

「面白い!いいでしょう!」

メフィストは指を鳴らし、了承した
まったく、本当に思ってんのかアイツ…



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