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其の壱
猫がいた
嘘でも比喩でも無い
家に帰ってリビングのドアを開けたらいた

しかも総勢13匹

どっから入ってきたか知らないが、酷く怯えてたり警戒心丸出しで唸る奴もいたもんだから、腹を空かせたり寒そうに震える奴もいたもんだから、



家におくことにした










『にしても全部黒猫か、名前決めにくいな、
まぁいっか』

取り敢えずと近くにいた一匹を抱き上げてみると、尻尾の先端が橙色だった

『お前、尻尾がオレンジだから橙な』

「にゃーう」

『次はー』

テレビの側でコロンと寝ていた奴を抱き上げると、尻尾は鴇色(ときいろ)だった

『よし、お前は鴇な』

「にゃあん」

『お前は…真っ黒だから黒な』

「にぁー」

『で、お前は濃藍な』

「…にゃ、」

取り敢えず警戒心がないやつを片っ端から抱き上げて名前をつけた
ほかの奴等はまだ毛を逆立ててフーッ!
とかいって威嚇してきやがった

『…悩んでてもしかたねぇよな、ちっとごめんな』

悩みに悩んだ末に、近くにいた一匹を抱き上げた

『っ!…いってぇ…』

尻尾が藤色の猫を抱き上げた瞬間に指を噛まれた
うわぁ血ィダラッダラだ、こりゃ後で消毒だ

『ほい、お前は藤な』

「フーッ!!」

『フーッて…いいけどよぉ』

藤の隣にいた猫は後ろ足が動かないのか、床にゴロンとしたままだった

『お前、足が悪いのか?』

「……に、」

『そうか、そりゃ災難だったな
じゃあこんな床じゃなくて柔らかいとこに移動するか』

足の悪い猫を抱き上げてソファに向かうと、
藤がとてつもない声で鳴きながら追いかけてきた

「にゃああああぁぁぁぁ!!!」

『いててててっ!!』

しかもバリバリ俺の足で爪研いでくる
足も致命傷だ、バカ野郎

『ここに下ろすだけだっての、なんなら藤も乗るか?』

「にゃっ!」

当たり前だろっ!って返された気がする
藤は自分で飛び乗っていた

『さて、お前は…茜色だから茜な』

「にゃ」

『おお、お前白目と黒目が反転してんのか、綺麗だなー、初めて見た』

茜の目をほめたら、茜と藤が目をパチパチさせていた、驚いたっぽい
取り敢えず人撫でしておいた

『はい、次はお前ー』

「シャーッ!」

『痛いっての、お前は緑な決定』

「シャーッ!」

『……お前は藤と似たモン同士だな』

「「にゃあああっ!!」」

不服だ!みたいな返事が藤と緑から返ってきた

『ほい、次はお前』

緑の隣にいた猫は紫色だった

『お前は紫な』

「にゃぁーう」

紫は俺の方に近寄ってくると、さっき緑が引っ掻いた腕をペロペロ舐めてきた

『血がつくから止めとけって』

腕を引いて言うと、なんか申し訳なさそうに
鳴いてきた、苦労してそうだ、
あ、しかもオッドアイだ赤と青の
やっぱ綺麗だなー、海と夕日みてぇだ

『次は「にゃあぅあっ!!」…独特な返事をありがとう、だが俺はやる』

妙な鳴き声を上げた奴をとっ捕まえたら緑とは反対の腕を引っ掻かれた
ホントに、これ地味に痛いんだぞ

『お前は迷彩、でもよく迷彩柄がいたな』

ちなみに迷彩の隣にいたのは赤だった
なんか、お前は犬の方があってる気がする

『……』

「……」

沈黙がつらい
かれこれ何分たっただろうか、この強面にゃんこと格闘を始めて

『お前はしぶといなー、だからさきにこっち見るわ』

「!にゃああっ!!」

ザクッ!

『!いぁっ…!!!』

やっべぇ、かなり本気でいてぇ…
マジで容赦ねぇなこいつら、まさか顔面にやられるとは思わなかったわ…

「に、にぁう…」

『…っあー、大丈夫、だ、な?』

流石に罪悪感を感じたのか、腕に抱いてる猫が気遣しげに鳴いた

『ほら、お前は青な』

名前を決めて下に降ろすと、強面にゃんこは
自ら来て尻尾を見せてくれた

『お、頭がいいなお前、んー、お前は茶色だから、そのまんま茶だな』

やっと終わったわ、風呂か飯か迷っていたが
周りの猫がニャーニャー鳴くもんだから
下を向いたらそこは血だまりだった

何秒か放心したあとに潔く自分の血だと気付いた

『先に手当てがさきか、お前等飯はちょっと待ってろよ』

救急箱と鏡を持ってきて、顔を確認
見事に左頬にでかい傷ができていたしかも二つ、十字傷になってて見栄えはいいか、も?

『まぁ、できちまったモンはしかたねえな』

ほっぺはガーゼだけあてといて、足と腕には包帯をまいた、指はバンドエイドでとめた
救急箱に眼帯が入ってたから、青に付けることにした

『青、お前ちょっとこっちこい』

警戒を薄くしたのか、すぐさま俺の膝に乗ってきた
素早く右目に眼帯をつけてやった

『お前、右目なかったんだな
ったく、前の主は治療もなんもしてくれなかったのか?薄情な主だな』

青の頭を撫でてたら、少し震えていた

『俺はお前を怖いとか醜いだとか全然思ってねぇからな、それよりよく頑張ったと思うよ
片眼だけで生きようとしてんだからな』

それだけ言うと、青を床に降ろした
そしたら今度は紫が近寄ってきた

「にぃ」

『ん?…あぁ、お前の目も綺麗だと思うぞ
海みたいな青と夕日みたいな赤が綺麗だ』

紫は気分を良くしてそのまま俺の右頬を舐めてから降りた

『勿論、茜の目も綺麗だと思ってるからな』

「にゃ、」

『そんな神秘的で綺麗な瞳、中々ねぇよ』

茜は嬉しいのか、尻尾が揺れていた

『さて、手当ても終わったことだからな
飯作ってやるから待ってろよー』

さーて、何が残ってっかな?
あれ、猫って何喰わせちゃいけねぇんだっけ
…まぁ、なるようになるか

冷蔵庫から白飯と卵を取り出して、取り敢えずおじやでも作ることにした








『おーら、出来たぞ猫どもー』

声をかけると、赤がたったか走って来た
元気があって大変よろしいこって

『よしよし、ちょっとまってろよ?
迷彩、茶、お前らちょっと来い』

渋々というか、警戒してるというか、
手のひらに少量のおじやをのせて差し出した

『ほら、毒味しな なんも入ってねぇよ』

迷彩と茶はちょっとずつ食べていたが、毒がないことがわかったのか舌を引っ込めた

『よし、じゃあ今度こそ喰うか』

まず、赤の前に器を置いてやると、迷彩と一緒に食べ始めた

次は青と茶。美味いのかガツガツ喰ってる

鴇と黒は上品に喰ってた

緑と紫は、緑がかなり占領しててちょっと紫が不憫におもえた

黄と橙は器に頭突っ込んでまで喰ってた
隣で濃藍がなんか猫パンチ?しながら多分注意してんだろーが、ちまちま喰ってた

で、最後に残ったのが茜と藤だった
こいつらは何がなんでも喰おうとしない
飯は喰いたいみたいだが、なぜか口をつけない困ったな

『なぁ藤、茜。少しでいいから喰ってくれ』

「フーーッッ!!」

「にぁう」

『嫌だってか、ソレはよ』

しょうがない、かくなるうえは直接入れて…
あ、もしかして猫舌か?

俺は茜を膝に乗せて、おじやを少し手に載せて冷ました

『フーッ…よし、喰えるか?茜』

少し冷めたから、ゆっくり口元に持っていってやると、ペロッと舌を出して食べた



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