[携帯モード] [URL送信]

main
序章
※原作の途中から入ります
普通にキスとか出てきます、嫌な人はback!
それでもいいぜ!という人はどうぞ



















ロンドンから少し離れ、森を抜けた先にあるよく手入れされた屋敷がひとつ
その屋敷に住まうのは――――




名門貴族ファントムハイヴ家


『やっと帰ってきた…』
屋敷の敷地に足を踏み入れたのは、紺青色の髪をなびかせる美しい娘だった
『勝手に入っちまったけど…随分と静かだな』
綺麗にしてある庭には、白薔薇が咲き誇っていた。そういえばシエルが好きだったな
幼い頃のシエルを思い出すと自然と笑顔になる、その後のことを思い出すと、とてもじゃないが笑えないがな
「失礼ですが…」
後ろから低めの男の声が聞こえた
気配が全くしなかったからか、思わず銃を取り出すことろだった
深呼吸をして後ろを向くと、綺麗な男がいた
「私、ファントムハイヴ家の執事ですが…我が主の邸になにか御用で?」
言っちゃ悪いが、胡散臭い笑顔だった
だが、我が主ということはシエルはいる
早く行きたいが、向こうからすれば俺はただの不審者だ、何て言おう…
『俺の名前はシルヴァ・ファントムハイヴ』
執事の目がわずかながら開かれた
おそらくこの執事には知らされてないか、死んだといわれたのだろう
『シエルの双子の姉だ。…信じられないだろうが、このカフが証拠だ』
右耳に付けたイヤーカフ
ファントムハイヴ家の紋章をかたどってある
これは父さんから受け継いだ大切な物だ
『シエルは、確か指輪を受け継いだはずだ』
「………」
執事は口に手を当てて、しばらく考え込んでいた、目線は俺から1度も外さずに
『…シエルか、田中に確認してもらえないか?あの二人なら分かるはずだ』
沈黙に耐えきれなかった
せめて目線くらい外してほしい
ホントに、心臓に悪い…
ハァァァ…とため息をついた
「お待たせして申し訳ありません、どうぞお入り下さいシルヴァ様」
唐突にそう言って、玄関まで連れていかれた
『え、いいのか?確認しなくてよ』
「はい、失礼ながら坊ちゃんの顔と骨格、シルヴァ様の顔と骨格を確認させていただきましたので」
清々しいくらいの笑顔で恐ろしいこと言ってのけやがったコイツ
何で知ってるんだ、というか覚えてるのか?
ありえねぇ…軽く恐怖だ
悶々とそんな事を考えていると、当主の書斎部屋に着いた
屋敷の中までよくこんなに綺麗にしたもんだ

コンコン
「坊ちゃん、お客様をお連れしました」
「…入れ」
中から不機嫌な声が聞こえた
「失礼します」
当主の座についていたのは、成長した片割れの弟だった、書類を読むのに夢中でこっちを見向きもしない
俺の知っている時とは違い、シエルは気高く立派になっていた
おそらく、既に女王の番犬として動いているのだろう
本当なら、俺が汚れ役を買って出ようと思っていたが、その必要も資格もないようだ
「セバスチャン、なんだ?僕は今忙しいんだ、些細なことなら後にしろ」
「坊ちゃんにとっては、命の次位には大切かと」
執事の言葉を聞き逃さないように、動きは素早くなくなり、ゆっくりになった
「どういうことだ」
「生き別れていた坊ちゃんのご兄弟がいらしています」
ピタリと手の動きが止まった
ご兄弟じゃないんだがなぁなんて思っていたが、シエルの変わりように驚いた
僅かに手が震えているのが見える
こっちを見ようとしないのは、本物じゃなかったら、なんて考えているんだろう
「嘘だ…嘘を言うなっ!」
悲痛な叫びがシエルの喉からほとばしる
「シルヴァにはもう二度と会えない、姉は僕の身代わりになって売られた!」
まるで自分のせいだというかのように、顔が苦痛に悲しみに歪む
もう見ていられなかった
シエルの前までいくと、優しく抱きしめた
『シエル、俺はここにいるぜ』
息を飲む音が聞こえる
『遅くなって悪かった、辛かったな』
肩が震えている、ふるえを止めるようにシエルを強く抱きしめた
『お前のせいじゃないからな、俺が売られたのは、絶対にお前のせいじゃない。だからな…もう泣きやめ』
「う…っシル…ヴァ、シルヴァ、シルヴァ…っ、シルっ…お、姉…お姉様ぁ…!!」
ぎゅうぎゅうと抱きついてくるシエルの肩をポンポンと叩きながら優しく撫でる
『(セバスチャン…少しいいか?)』
振り返り、目線だけで聞くと、静かに近づいて来てくれた
『気分がおちつく紅茶を用意してくれるか?このままじゃ話せない…』ボソ
セバスチャンは頷いて部屋を出ていった
「う…ひぐっ…シルヴァ…ひっ…うぅ…」
『大丈夫か?全く…相変わらず泣き虫だな泣くなと言った直後に号泣とはな…』
甘えたいのだろうか、一向に離れる気配がない、まだ収まりそうもないしもう少しいいか


―――10分後


『落ち着いたか?シエル』
「あぁ…すまなかった」
紅茶を飲みながらすっかり落ち着いたシエルはバツが悪そうに言った
「シルヴァ…今までどこに居たんだ?」
『貴族のところに売られ、その後人体実験されたな』
さも当然のように言ってやった
今となっちゃどうでもいい事だしな
『毎日そんなで耐えきれなくなって、貴族皆殺しにして逃げてきた』
シエルは口をポカンと開けて、呆気になりこ俺の話を聞いていた
いや、聞いていたかも怪しいが…
『街の奴等にファントムハイヴ家はどこか聞いてな、んでここにたどり着いた』
これで俺の話は終わり、と手をパチンとうち鳴らすとシエルが勢いよく立ち上があった
「何故……!!…っ」
切り出したはいいが、なんて声をかければいいかわからないんだろう
余り悲しい顔を見ていたくはないしな
『気にするなシエル。俺は大丈夫だからよ』
頭をポンポンなでるが、不服らしい
「だが!……っ…」
『なら…家族にしてくれよ、前みたいに俺に話しかけてくれ』
今まで一人で居た俺は、愛情に飢えていたんだと思う
気がつけば、変なことを口走っていた
だが、撤回したくない言葉でもある
だから俺はシエルの答えを待つ
「…えり」
『え?』
聞き取れず、聞き返してしまった
「シルヴァ、おかえり…!!」


[*前へ]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!