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その名はスカー
偉大なる魔法使いよ
稀有な存在の中でも更に異質な者よ
一つ条件を呑んでくれるのならば、貴方の願いを叶えます。
巨万の富も幾億の星々の支配も永遠命でさえも思いのまま、
  さあ、貴方の願い事はなんだ?



……………………もちろん、それはーーーーーー








バルバッド王国、上空ーーーーーーー
赤い腰までの三つ編みの髪を風になびかせながら、浮いている娘が1人。
絨毯に寝転がりながら林檎をかじる。
含みきれなかった果汁が口の端を伝い落ちる姿は艶やかだった。
無造作に口元を拭う姿さえも気品に溢れているーーーまさに、絶世の美女だった。
果汁で手が汚れるのも厭わずにかじり続ける
ふと、彼女は起き上がって、誰に言うでもなく小さく呟いた
『………………アラジン?』








バルバッド王国へ続く林道
アラジンとモルジアナはアリババの話をしながら歩いていた
「そういえば、アラジンはアリババさん以外に知り合いはいないのですか?」
「ふふっ、実は一人居るんだっ!その人はね、とっても暖かい人なんだ!僕は何度も助けられたよ、彼女の優しさに!」
アラジンは花が咲くような笑顔で彼女について話した
(とても嬉しそう……とても大切な人なのね)
「………その方の名前は何ですか?」
「えっとね、彼女の名前は『アラジーーン!!』えっ!?」
アラジンが彼女の名前を告げようとした時、空に浮いた絨毯から赤い腰までの三つ編みの娘が降りてきた
「スカー!!!!!」
アラジンは彼女、スカーを見るなり彼女の胸に飛び込み嬉しそうに話し始めた
「久しぶり、スカー!」
『あぁ、久しぶりだなアラジン。背丈や身なりは変わらないが、少し見ない内に成長したな?ルフが輝いてるぞ?良くやった』
スカーは愛おしそうにアラジンの頭を撫でながらそう言った
「うわーいっ!ウーゴくん誉められたよっ!あ、ウーゴくんも久しぶりだよね?」
『あぁ、そうだな。ウーゴ、久しぶり』
スカーは笛に手を当てながら、少しマゴイを送った
『さて、挨拶も済んだ所で彼女を紹介してくれないか?アラジン』
スカーは、少し離れた場所にいたモルジアナを見ながらそう言った
「あ、ごめんねっ!モルさん。」
「いえ、大丈夫です。」
「紹介するね!スカーだよ、スカーモルさんだよっ!
「モルジアナです、宜しくお願いします、スカーさん。」
『スカーだ、宜しくな、モルジアナ。別に敬語じゃなくて良いからな?』
「はい。」
2人は握手を交わし、3人は歩き出した
「スカーはどうしてあんな所に居たんだい?」
『特に理由はないが、少し散歩をしようと思っていたんだが、お前のルフを感じて辿ってきたって訳だ。』
「へ〜、ならスカーも一緒にバルバッドに行こうよっ!僕達は友達に会いに来たんだ。」
『そうだな、お前等が平気なら一緒に行かせてもらうかな。』
「わーい!やったねモルさん!」
「はい!」
『俺もアリババって奴に会ってみたいなあ』
「本当かいっ!?嬉しいなあ。あ〜あ、早くアリババくんに会いたくなっちゃったな…」
「…会えますよ、この道を辿れば。」
「うんっ。そうだね!」(この道の先に……アリババくんとアリババくんの故郷が待っているんだ!)
アラジンは笑顔で両腕を広げて待つアリババを想像し、歩き始めた
 すると
「やあ、君たち!今日はいい天気だね。」
若い男が真っ裸で葉を一枚巻き付けた状態で両腕を広げていけしゃあしゃあと言ってのけた
「「『……………………………』」」
3人は暫く無言で思考が止まった
「ハッ!モルさんスカー危ない!下がって!」
モンスターかもしれない!と、3人は戦闘体制に入った
「!?」(ガーン)
「ここは僕に任せて!!」
「えっ!?いや、違うんだ!!話をきいてくれ!!」
若い男は慌てて説明をした。寝ていた時に身包みをはがされてしまい、行くに行けなくなってしまったらしい。今はアラジンの服を借りて着ている
(さっきはアラジン達とのりでやったが、…アイツ、だよな?……まあ、本人が言い出すまではほっとくか。)
「服を貸してくれてありがとうアラジン!
「うん!僕の小さい服しかなくてごめんよ。」
「俺の名はシン。バルバッドへ向かう所だった商人なのだよ。」
「そっか…さっきは話もきかずにごめんよおじさん…どうも僕は砂漠越えのせいで、危険なものにびんかんになっているようだよ…」
「……………………」
『………なあ、シン。俺の上着を貸そうか?』
「いや、大丈夫だよ、スカーは優しいなあ」
シンはパツパツな服を叩いてみせた
(……………いや、絶対怪しいってアレ。現にモルジアナがドン引きしてるじゃないか…。)
『まあ、本人が良いなら別にいいか。』
「…あの、バルバッドへ急ぎませんか?今日中に着かないと…」
「おっとすまないねお嬢さん!」
(ナイスだ、モルジアナ)
スカーが目で言うとモルジアナは恥ずかしそうに頭を下げた。
「ねぇ、バルバッドはまだかな?」
アラジンはワクワクしながら聞いた
「あの丘を下れば街が見えるよ。」
シンが先がひらけて見えない向こうを指差しながら言った。
「え〜?見えないよ?」
「潮の香りがします…」
モルジアナが言うとアラジンは走り丘へとむかった
丘の下に広がっていたのは水の国だった
「ここが…バルバッド…!!」
『…まるで、水の都だな。…潮風が気持ちいい…良い国だ。』
スカーさえも賞賛を述べた
バルバッド王国。
国面積は大陸1小さく、国というより都市と呼ぶべきほどだ。しかし、それはあくまでもこの大陸においてのみの話である…
バルバッドは、首都こそ大陸におくが、その実体は大小数百もの島々を支配する、大海洋国家なのだ。
バルバッドは、北のオアシス都市群、北東の小国群、西のパルテビアの中心地とあって古来より交易によって栄えてきた。
様々な人種、文化が混じり合い、周辺国とはちがった雰囲気を持つ国なのである。
「ここは代々、サルージャ一族という王族が治めて盛り立ててきた国なのだよ。しかし、先王が亡くなられてからは…………
シンは壁にかかれた王政打破の文字を見た
……国が乱れているようだね。でも、ここなら安全だよ。俺もいつも泊まっている国一番の高級ホテル!」
シンは目の前の巨大で豪華な建物の前に立ち言った。
「でも、宿代が心配だわ……私は、半年間キャラバンで稼いだお金があるけれど多くはない…」
「僕もだよ……」
『俺は何とか3人分は出せるが、一泊分だけだな……困った。』
3人は心配そうな顔をした
「なーに、心配いらないよ。宿代は俺が出そう。助けてもらった礼だ。お金は、先にここに来ている俺の部下が払うから…好きなだけここに泊まっていくといいよ。」
シンは胸に手を当て、任せろとでも言うようにはっきり言い切った
「「『!!』」」
「ありがとぅ〜おじさんお金持ちなんだね〜!」
「…………!!!」
『……ありがと、な。』
アラジンは飛び上がって喜び、モルジアナは何度も頭を下げた
「ん?スカーは気に入らなかったかな?」
『いや、タダより怖いもんはねぇって言うからな。一泊分くらい払わせろ。』
スカーはシンに一泊分程の金貨が入った袋を投げて渡した
「そうか、ならこれは有り難く受け取っておくよ。」
スカーはそれで満足したのか、アラジン達の後について行った
「旅する健気な若者には…手を差し伸べたくなるものだな…よしっ!じゃあ俺も部屋に行くとするか!」
ムチッムチッ
そんな効果音が聞こえてきそうな程、シンの姿は残念なものだった
誰だってあんな格好をしていれば怪しむ
「なんだきさま!あやしいやつめ!」
「えっ!?俺のどこがあやしいっていうんだ!」
「どうみてもあやしいだろうが!!」
『やっぱやられたか……』(バカだな)
ワーーーーー    ワーーーーー
ゴチャゴチャ  ゴチャゴチャ
「「…………」」
「いましたね……」
「まったく、何をなさっているんだあの人は……。シン様!今まで、どこへ行ってらっしゃったのですか?」
「?」(なんだろう…?)
アラジンとモルジアナは首をかしげた。が、
スカーは口角があがるのを止められなかった
(ハハッ、こりゃ当たりだな…。あの2人といい、アイツといい…俺は運が良い。)
その後何もなかったかのように今までのことを部下の2人に話した
「…そうですか…私共の主人がご迷惑をおかけしました。主人の命通り、3人方の宿代はどうぞ私共にお任せくださいね。」
「ありがとう!部下のお兄さん達!」
アラジンはお礼をモルジアナはまた頭を下げていた
『……』
スカーはというと、部下の喋っていない方をずっと見ていた。それに気付いた部下のお兄さんも見返してきた
ジーーーーーー………。
やがて沈黙に耐えきれなくなったもう1人の部下のお兄さんがシンの肩をたたいた
「さあ、あなたはそのはしたない格好をなんとかしてください。」
その言葉で2人は見つめ合うのをやめた
「じゃあな!スカーにアラジンにモルジアナ明日、飯でも一緒に食おう!」
シンは背中を押されて部屋へと帰っていった
「…………」(ジローー……)
「!」
喋っていない方の部下のお兄さんは次はモルジアナを見た。そしてすぐに2人を追いかけていった
「…やはり、あの娘達が気になるだろう!お前と同じファナリスとはなぁ…俺も驚いたぞ。」
「はあ。まあ、珍しいスからね。」
「へえ、私も君以外では初めて会ったよ。ところでシン、まさか、荷物を全て取られた訳ではないですよね!」
「盗られたんだ。」
次の瞬間、部下のお兄さんの顔から表情が抜けた
「…服以外の…まさか…あらゆる道具まで…!?」
「全て盗られたんだ…」
シンが申し訳無さそうにいった
「あんたは…あれがなんだか忘れたんですか…この国に何をしに来たのか忘れたんですか!?」
ガク……ガク……ガク……ガク……
「はっはっはっはっはっはっ」
部下のお兄さんは、シンの首をしめガクガクと揺らしながら訴えた
「ハハッ大丈夫、大丈夫。」
「大丈夫じゃねぇよ!」
「まあ、なんとかなる俺に任せておけ!」
「まったくあなたは…いつになったら王としての自覚が生まれるっていうんですか?」
「………………………」
「シンドバッド王よ!」
「………」




 



「ここがお部屋でごさいますよ。」
「わ〜〜〜〜〜ゴージャス!!」
アラジンは煌びやかな装飾が施された部屋へ入り、色々なものを見たりベットにダイブしたりしていた
モルジアナはいそいそと荷物を片付けていたが、おそらく緊張しているのだろう
スカーは早々にベットに横になり疲れを癒していた
「何かわからないことがあれば、なんでも仰ってくださいね。」
「それじゃあおねえさん、一つ聞きたいことがあるんたけど…」
「はい、なんでしょう?」
「アリババくんて人を知らないかい?僕の友達なんだ。」
ガシャン!!
アリババという名をきくと、女性は果物が入った皿を落としてしまった
「………?どうしたんだい…?」
「失礼しました。その名前に少し驚いてしまいました。よく考えれば、そう珍しい名前ではありませんでしたね。あなたのご友人と同じ名前の者が、今、この国では有名人なもので…」
「有名人……?」
「今、バルバッドのアリババといえば、指すのはただ1人…怪傑アリババ。この国一番の犯罪者でございます。」
「「…………」」
2人は声も出せない程びっくりしていた
『………少し、荒れそうだな…。』
夜の空を見ながらスカーはそう呟いた

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