[携帯モード] [URL送信]
ページ:4
「僕も、君も、母さんも、父さんも、街も、空も、太陽も、みんな――」

 俺はこんな結末を望みはしなかった。けれど、俺一人が望んだところで優希は救えない。救えはしなかった。ここにいる俺は登場人物ですらない。ただの傍観者だ。ストーリーの欠陥でしかない。

「やめろよ。本当のことを言ってしまったらみんな思い出す……みんな夢から覚めて、消えてしまう。だから」

 ヨハンはまるで、ネヴァー・ランドを守るピーター・パンだ。必死でこの世界を守ろうとして、泣きながらカインに懇願するその姿は俺そのものだった。

「作りものなら、僕は捨てるよ」

 目隠しを外すと、銀眼が見て取れる。カインは無邪気に笑うと、また明日も会えるよ、とでも言ってドアに手をかける子供のように体を反転させた。何も映らない眼で空を、海を、見ている。

「海も、空も、きっと綺麗だろうね……」

 目を閉じると、幾筋もの涙が流れた。とめどなく、ただ悲しみが溢れてゆく。

「ああ。綺麗だよ。陽と海が交ざる」

 二人は時が止まる程の長い間、そこに留まっていた。

「さよなら」

 刹那、白い影が波に呑まれる。気付くとヨハンは地に伏せ慟哭していた。

back[*]next[#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!