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◇神としての罪と罰[20XX]
 俺はペンを動かそうとしていた手を止め、インクで汚した紙を眺めた。『エデン』に、架空の世界に生きる少年達の物語を。これは俺が親友――皆藤優希の姿を見出だす為のストーリーだ。そして、贖罪も意味している。彼が本当に存在したのだと証明するために繰り返し書き直され、読まれた物語『エデン』。それは優希がかつて生きた風景だった。だが、その風景はどこにも存在しない。未だかつて見ないその場所を俺は夢想した。優希の為に。そして、俺の為に。
「あんなことをしなくても、優希。お前は十分俺を苦しめるのに――」
 ナイフの感触が今でも蘇る。手の冷たさだって感じる程だ。何故優希は死のうとしたんだろう。俺には救えなかったんだろうか。……本当に? 記憶の中の優希はただただ微笑んでいる。
「俺は間違ってたのか……?」
 優希からの返事はない。書斎は静まり返っている。
「何も言っちゃくれないんだな、優希」
 これじゃ独り言じゃないか。なあ、何か言えよ。俺は泣きながら机に伏して寝てしまった。



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