黒子のバスケ
貴方という、存在 黒子(切)
あなたという、大切な存在 ー黒子ー
「…すみません、火神君。少しよりたい所があるんです。付き合ってもらえませんか?」
「あぁ?別に良いけどよ…どこ行くんだ?」
「行けば、嫌でもわかりますよ……」
部活の帰り、僕は、火神君と一緒に花屋に来た。
そこで、キキョウの小さな花束を購入する。
花束を抱え、僕達はある場所に来た。
そこは、お墓
「ここ、墓地じゃねーか。こんな所に何の用があるんだよ」
「こっちです……」
幾つもある墓石の前を通り、1つの墓石の前で足を止める。
そこには【如月里麻】と彫られている。
「…黒子の知り合いの墓か?」
「そうですね。知り合いというより、僕が初めて恋をした人のお墓です」
「はぁ?」
火神君は、僕の言った言葉の意味をわかてないようです。
「…里麻さん」
その名前を呼んでも、返事は返ってこない……
あぁ、ダメですね。今日こそ、泣かないつもりで火神君を連れてきたのに、我慢できそうもありません。
僕の頬を伝う大きな雫を見て、火神君は驚いていました。
「黒子…、お前」
「すみません、火神君。僕の話に、少し付き合ってください…」
──────────
僕にはとても大切な、掛け替えのない存在がいていました。
名前は、如月里麻さん。とても元気で、本が好きで、笑顔が素敵な人でした。
『テツヤ君も、本好きなんだ』
「はい。里麻さんも、ですよね?」
『うん』
そういって笑う彼女の笑顔が、僕はとても好きでした。
「里麻さん、本屋に寄ってもいいですか?新刊の発売日なんです」
『うん。私も見たい』
本屋にきた僕と里麻さんは、それぞれ自分の好きな本のジャンルの棚へ別れる。
僕は、自分の目当てであった本の新刊を手に取り、里麻さんのいる棚に向かう
「里麻さん…?」
『…テツヤ君。新刊、あった?』
「はい、ありましたよ」
僕がそう言うと、里麻さんも一冊本を手に取り、レジに向かう。
「里麻さんは、その本が本当に好きですね」
『うん、好き。恋愛モノなんだけどね、テツヤ君にもオススメだから、読んでみてよ』
「どういうお話なんですか?」
僕がそう聞けば、里麻さんは笑顔で話してくれた。
『主人公の女の人の恋が、絶対にかなわない恋になっちゃうの。
主人公は好きな人に好きだと伝えられないまま、好きな人が死んじゃう。主人公はそのショックで衰弱していくんだけど、主人公の事が、昔から好きだった幼なじみが、主人公を励まし、新しい恋を見つけるって話し』
そう言って、空を見つめる彼女の目は、とても悲しそうで、寂しそうだった。
「今度、僕にもその本貸してください」
『…うん!』
僕が見た彼女の笑顔は、この時が最後だった。
──────────
「…里麻さんはその後、交通事故で亡くなったんです」
「………そうか」
素っ気なく返してくれるのは、火神君なりの優しさだと思う。
「あれ?テツ君…。それに、かがみん?」
「桃井さん、青峰君…」
「そっか、テツ君も来てたんだ………里麻ちゃんのお墓参り」
桃井さんは悲しそうな顔で、墓石を見つめる。
「はい…。今日が命日ですから」
そう、今日1月31日
それが、里麻さんの命日。
今日で3年目になる。
「今日ってたしか、黒子の……」
「はい。僕の誕生日です。
里麻さんは、僕を庇って事故にあったんです」
青峰君は、眉間にしわを寄せ、墓石を見つめる。
そういえば、青峰君も里麻さんの事好きでしたね…
「………テツ君。これ、里麻ちゃんのお母さんから預かったの。
里麻ちゃんの部屋掃除してたら出てきたんだって…………」
桃井さんから受け取った、白い封筒。
そこには"テツヤ君へ"の里麻さんの綺麗な文字が書かれていた。
僕は、恐る恐る中に入っている神を取り出す。
そこは、里麻さんの字で、ビッシリと埋められていた。
【 テツヤ君へ
今、テツヤ君がこの手紙を読んでいるということは、私は勇気を出せたと言うことなのでしょうか?
それとも、もう、この世に存在しないのでしょうか?
どちらにせよ、テツヤ君には伝えておかないといけないことが、2つあります。
1つ目は、私が、重い病気に掛かってしまっていると言うことです。
医師によると、病気の発見が遅く、治る保障は無いそうです。例え手術をしても、治る確率は50%だそうです。
でも私は、その50%に賭けてみようと思います。
2つ目に、私はテツヤ君の事が好きです。大好きです。
さつきがテツヤ君の事を好きなのは、知ってます。けど、私もテツヤ君の事が好き。
もし病気が治って、私が元気なら、私とお付き合いしてください。
でも、もし、私が死んでしまっているのなら、私の事は忘れてください。
テツヤ君の恋を、恋愛をしてください。
精一杯生きてください。
最後に、私はテツヤ君の事が大好きだよ
里麻】
「………っ」
伝えればよかった。
僕の気持ちを、里麻さんに、ちゃんと伝えればよかった。
あなたの笑った顔が好きだと、
あの小説を読むときの、コロコロ変わるあなたの表情が好きだと、
あなたの事が、心から大好きだったのだと………
「り……お、さん………っ」
僕は、里麻さんからの手紙を抱きしめ、静かに泣いた……
僕もあなたが大好きです。里麻さん
里麻さんの部屋に、いくつも置いてある本の題名は
"あなたという、大切な存在"
僕にとって、あなたという存在は、とても大切なモノでした。
─end─
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