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小説?
小説?
目を覚ますと、そこにはいつもの家の天井ではなく、真っ暗な空間が広がっていた。

何故ここにいるのか、それすら分からない。

いや、それ以前に僕は誰だ?

手元には錆びたアタッシュケースに古い懐中電灯、、、そして。

その二つとは比較にならないほど真新しいコンバットナイフが乱雑に放置されていた。

懐中電灯を取りスイッチを入れる、やはり見た目同様古びて弱々しい光が僕の周辺を照らした。

部屋全体が次第にはっきりと見えてくる、どうやらここは実験室の一部のようだ。

すぐ隣に血が付着したハサミやメスが丁寧に揃えられている、使用してからあまり時間が経過してないような状態だ、、、。

まだ夢の中にいるようだ、夢ならば早く覚めてほしい。

仕方なく行動することにした、懐中電灯を片手に前方に見えた鉄製の扉を開ける。

再び暗闇が続いていた、だがその中にはっきりと人がいるのを確認した。

まるで犬のように周辺の臭いを嗅ぎまわっている、、、一瞬動きが止まった。

ゆっくりとこちらに視線を向ける、片足を引きずりながら赤ん坊のように這い蹲りながらこちらに向かってくる。

その姿を見てすぐに覚った、逃げなければと。

前の部屋に逃げ込み扉を閉めた、だが鍵が見あたらない、周辺に隠れるような場所も無かった。

懐中電灯の弱々しい光がコンクリートの床に放置されていた”あれ”を照らした。

それは弱々しい光の中、自分の存在価値を主張するように堂々と輝いていた。

すぐにコンバットナイフを利き手に取る、それと同時、いや、若干遅れて鉄製の扉が少しずつ開いていく。

扉から距離をとりナイフを構える、扉の隙間から不気味なうめき声を上げて人の頭が入ってきた。

光が顔を照らすと同時に、恐怖が足元から一気にこみ上げた。

原型をとどめていない顔から飛び出た眼球が、せわしなく獲物を探している。

再び臭いを嗅ぎ始めた、そして、、、。

さっきまで僕の隣に丁寧に揃えられていたメスやハサミの中にゆっくりと進んでいく。

もしや眼球はただの飾りで、自分の嗅覚だけで獲物を探すのかもしれない、、、。

不気味な生き物の口?から長い舌が飛び出しメスを掴む、先端に付着した血を舐めながら不気味なうめき声を発し続けるその姿は、
まるで食事をしているように見えた。

すぐにこの生き物を殺さなければ、だがどうやって、、、。

この状況を見る限りあいつは血の臭いに反応しているはず、では僕が何もしなければ襲ってこなはずだ。

いや、もし予想が間違っていたら僕は間違いなく殺される、現にさっきだってなぜこちらに向かってきた?

覚悟を決め不気味な生き物に一歩、また一歩と歩み寄る、そして、、、。

今度はハサミを舐めている頭にナイフを突き刺した。

骨を砕くような音とともに、刺し口から緑色の血が吹き出た。

今度はうめき声ではなく不気味なほど耳に響く悲鳴が部屋に響き渡る。

頭上にナイフが刺さったまま怪物は狂ったように暴れた、だが、やがて静かになり生気が完全に無くなった。

ゆっくりと頭上のナイフを抜き取る、ナイフの刃の部分が若干熔け始めていることに気づいた。

この緑の血には硫酸の成分が、、、いや、それならこの怪物はなぜ熔けない?

完全にナイフの刃が使い物にならなくなってしまった、アタッシュケースを開き全てのメスとハサミを詰め込んだ。

再び鉄製の扉を開け、あの怪物がいた通路へと戻った。

もしあの怪物が出てきたらどうすればよいのだろう。

メスやハサミでは殺傷能力が低すぎる、、、。

その前にこのメスとハサミには血がたっぷりとついているじゃないか。

においで気づかれてしまう、、、。

アタッシュケースの中から道具をすべて出し、全ての血を靴で拭いた。

正直これで安全になったわけじゃないが、何もしないよりはましかもしれない。

いざとなれば一番血の臭いがキツイ靴を投げて逃げれば、、、。

怪物がもう出てこないよう心の中で祈りながら、暗闇の中を重い足取りで進む僕だった、、、。



―残りメス24本ハサミ20個―



第一話、終了


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