GANG×HERO!
はじまり
「……たぞ。…おい、コウ。コウ、起きろ」
「…ん、」
くぁ、と欠伸をひとつして、彼は目を開ける。
「学校に着いたぞ。じゃな、元気でやれよ。……坊にはマメに電話してくれよな」
「…ああ、わかってる。ここまであんがとな。行ってくる」
大切な"家族"にヒラヒラと手を振って、車を降りる。
彼は相模 紅也。今日からここ、西園学園に転入する。
紅也は高い身長、それに見合った筋肉質な体つき、何より誰もが振り返るような男前な顔立ちをしている。整ったそれは自信家めいたふてぶてしい笑みを浮かべることもあれば、時には人を視線だけで殺せそうな物騒なものになる。明らかに肉食系、といった感じだ。
加えて印象的なのが、まだらな明るいオレンジ色に染められた肩より長い癖っ毛。
紅也の家は端的に言えば暴力団関係だが、表向き、というか実質的には大手企業である。表裏一体ではあるが。
何故だか知らないが、父親からろくな説明も無しに転入を一昨日言い渡された。
一昨日、だ。
『お前ももっといろんな変な奴と遊んでこい』
とかなんとか言われて。
つか、遊ぶったって男しかいねぇじゃねえか……と紅也はぼやく。男子校なんて、むさい、暑苦しい、華がない、ホモの巣窟?そんなマイナスイメージしかない。
まぁ来てしまったもんは仕方がないと、門の周りにインターホンを探した。
「……ん?」
先程紅也がやってきた方角から、別の車が現れる。
「俺の他にも転入生がいる、ってか…?」
好奇心が勝って、紅也は少し離れて様子を見ることにした。
「……あ?」
高級車から出てきたのは…、なんだありゃ?
着ているのは、西園学園の制服だ。
頭はワカメみたいなもじゃもじゃカツラ。紅也は経験で分かる。あれはヅラだ。おまけにビン底眼鏡。仮装大会かなんかか?にしては中途半端な……。背はかなり低い。
あんな眼鏡で前見えんのか?とややピントのずれたことを考えてみる。
「うおお!!でっかい門だな!!」
お前はでっかい声だな。
紅也はその低身長の彼に近づいてみた。門に驚いているところをみると、やっぱり同じ転入生かもしれない。
「おい、お前……」
「とりゃぁぁあああ!!!」
「はァ!?」
紅也の声が届くより前に、変装少年が大きく助走をつけて大声あげて門を飛び越えた。
「おー……っておい!ふざけんな俺の話聞け!クソ!」
紅也はついさっきまでインターホンを探していたのも忘れて、彼の後を追った。ちなみに、彼ほどの助走は必要ない。
「よっ…と」
すぐに向こう側に降りずに、一旦門から下を見てみる。
「…あらー……。」
なんか誰かが、少年の下敷きになっていた。
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