GANG×HERO!
プロローグ
夏野聡は腐男子である。
彼は今、沈んでいた。
「……………………。」
彼の腐男子という性癖を考えると非常にもったいないくらい秀麗な顔をくしゃりと歪めて、彼は溜め息を吐いた。
「…………つまんないなぁ。」
そう、つまらない。
それが彼を悩ませている一番の事案であった。
こんな山奥の、お坊ちゃんたちのための学校でできることなど限られている。
男だらけ、というか男だけ、というのは、たしかに楽しくはあった。
しかしその興奮も、初等部からエスカレーター式の学園生活に慣れてしまえばあまり価値がないものとなる。
とにかく、今の学園は夏野にとって平和すぎた。
もっとも、暴力事件や強姦事件が珍しくないにもかかわらず『平和』と感じるほど、夏野の感覚がこの学園によって変になってしまっていることは否めない。
「…誰かさ、もっとこう、……生徒会とか、担任とか、理事長とか、不良とかをさぁ……メロメロにしてくれないかなぁー……。」
自室のパソコンでお気に入りのサイトを巡りつつ、また深い溜め息を吐く。
「王道くん…あぁぁ……。せっかく金持ち全寮制男子校にいるんだから、やっぱり王道的BLを見たいよなぁ……。」
まぁ俺は王道でも非王道でも、なんでも好きなんだけどさー。
なんて呟きながら、ばふんとベッドに横になる。もうすでにカーテンの隙間から朝日がさしこんでいるが気にしない。
「…誰か…いないかなぁ…」
落ちてくる瞼をそのままに、夏野は最後にもう一度だけぼやいた。
「…つまんない、ここ、を……めちゃくちゃ…に……して、く、…れる……、」
俺の、……。
広い一人部屋には、規則正しい寝息だけが残った。
西園学園生徒会会計、夏野聡の憂いであった。
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