MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第53話 通学路 3
◆◆◆
ハヤテ「いやー…まさか高校に通う事が出来るなんて思いませんでしたよ」
ナギ「お前、そのセリフ何度目だ………」
明らかに小学生にしか見えない少女『三千院ナギ』と通学路を歩いているのは、親に1億5千万の借金を押し付けられた不幸な少年『綾崎ハヤテ』。
ハヤテ「でもお嬢様は凄いですね。飛び級で高校生だなんて」
ナギ「別に凄かないぞ。飛び級は私だけじゃないし、合併前の白皇には毎年数人はいた。それにこの学校における飛び級のタイトルホルダーは、10歳で入学して13歳で卒業している」
ハヤテ「Σええ!?」
ナギ「おまけに生徒会長を2期連続で務め、成績は三年間ぶっちぎりのトップ。最優秀生徒に贈られる銀時計を3つも持っている強者だ」
ハヤテ「は〜…いるんですね〜世の中には…そんな化け物みたいな人が……」
ナギ「いるんだよ。そういう化け物みたいな奴が…お前の直ぐ側にな」
ハヤテ「へ?」
何処かのメイドがクシャミをしたのは、余談である。
ハヤテ「――――あっ!?」
ハヤテの視線の先には2人の学生と黒いバイクに乗った1人の女性がいた。1人は少し前へ離れて歩いて、もう1人は女性のバイクに乗っている。その学生達はハヤテとナギと同じ様に、鳳凰へ入学する生徒だろう。
だが、1人で歩いているその生徒に向かって………
一台のトラックが猛スピードで突っ込んでいく。
ハヤテ「そこの君――――!!」
声を張り上げて危険を知らせようとするが、トラックのスピードの方が速く……
―――ドガッシャアァァァン!!!!
大きな音を発てて激突した。
◆◆◆
「――――何だ………?」
少年の直ぐ側で大きな音が上がる。最初はハヤテが呼び掛けた声に振り向いただけだったが、振り向いた瞬間、少年の視界目前にトラックが映った。
ぶつかると思った少年だったが、ぶつかる瞬間に誰かが少年とトラックの間に割って入り、その誰かがトラックを片手で制止させた。
「静雄!? 大丈夫!!?」
黒いバイクに乗った女性と少年が慌てて駆け寄る。
少年は“静雄”と呼んだ少年の身体を調べたが、後ろに転けた程度で怪我はしていなかった。
静雄「あ、あぁ。大丈夫だ………」
『平和島静雄』は友人である『岸谷新羅』の手を取って立ち上がり、トラックを制止した誰かを見る。
勇人「大丈夫か?」
その誰か――神爪勇人は、トラックから手を離し振り向いて、そう聞いた。
◆◆◆
新羅「―――…一応病院で見てもらった方がいいのかな。セルティ、静雄を運んでくれる?」
静雄「大丈夫って言ってんだろーが………俺よりアンタは大丈夫なのか?」
ぶつかって来たトラックの運転手から、この事故を脅迫ネタとして握って、運転手を追い返す勇人。
勇人は静雄の問に“なんともない”と答えるように、手をヒラヒラさせてみる。
勇人「へーきへーき。あれくらいで怪我なんてしねーし」
新羅「……まさか静雄並みに化け物染みた人がいるなんて思いもよらなかったよ」
新羅の言うことに心底同感なのか、セルティはヘルメットを被った首をコクコクと頷く。
静雄「どーいう意味だ……?」
新羅「………………アハハ♪」
静雄「笑って誤魔化してんじゃねー」
怒る静雄をドウドウと宥めるセルティ。
「…………勇人」
一体何時からそこに居たのか、金髪の少女が勇人の袖をクイクイと掴む。
勇人「ん? どーした、イヴ」
イヴ「時間………」
勇人は懐に手を伸ばして銀時計を取り出し、時間を確かめる。
勇人「もうこんな時間か」
新羅「早く急がないと!」
もう後10分程で入学式が始まる。
勇人「走ったほうがいいな」
新羅「うん。送ってくれてありがとう、セルティ」
静雄「すまねぇな」
セルティは何か端末のような携帯機カタカタと打ち
セルティ『気にするな』
と、端末に書かれた文章を2人に見せる。
どうやらコレがセルティという女性のコミュニケーションの取り方のようだった。
セルティはエンジン音がしないバイクを走らせ、去っていった。
勇人「………変わった奴だな」
ハヤテ「―――大丈夫ですかー!?」
トラックと激突するところを遠目で目撃していたハヤテとナギが、駆け足で寄ってきた。
ナギ「あれ? 勇人じゃないか」
勇人「おー、ナギか。お久ー」
ハヤテ「って、お嬢様のお知り合いですか?」
ナギ「あぁ、まぁな」
イヴ「………………時間」
勇人「と、そうだったな。お前ら急げよ」
勇人達は駆け足で学園へ向かい、ハヤテは勇人を見て………
ハヤテ(あれ…この人、昔何処かで会ったような……?)
ハヤテの腕に付いている淡い空色の腕輪が、太陽の日光に反射し、一瞬眩しく輝いた。
◆◆◆
「――――とんだ邪魔が入ったよ」
走っていく勇人達を見ながら少年は呟いた。
さっきのトラックの運転手は、事故で平和島静雄にぶつかろうとした訳ではない。
彼が運転手を買収して、わざとトラックを突っ込ませたのだ。
「新羅に聞いた奴とは別の男が出てきたし…………」
彼……『折原臨也』は笑顔を浮かべる。臨也の顔に浮かんだのは、確かに笑顔だった。たがその笑顔は笑顔でありながら仮面のように無表情であり、笑顔でありながら何処までも冷淡だった。
臨也「けどまぁ、退屈せずに済みそうだね」
ハハ、と無機質な笑いを漏らしながら、臨也は学園へと向かった。
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