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MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第45話 音楽室に潜む影





◆◆◆




勇人「………香澄は、何故幽霊を探しに来たんだ?」


香澄「そんなの、アンタに関係ないでしょ」




まだ怒りが収まっていないのか、香澄はそう言い放った。志を同じくする者同士の割には冷淡な道連れだ。




香澄「………今年こそ見つけてみせるんだから」



独り言のように、ぽそりと呟く。




勇人(“卒業式の日に現れる”っつー噂がたってるってこたぁ……最低でも数年は経ってるってことか。香澄の今の言葉からすると、毎年幽霊探しに現れてんのか)



香澄「で、どこから調べる?」


勇人「ん?」


香澄「幽霊だってその辺の廊下をぷらぷらはしてないでしょ。何処の教室から見て回るの?」


勇人「んー、そうねぇ……」



そこで勇人はやっと杉並のことを思い出した。奴は今頃宇宙人と楽しくやっているのだろう…………まぁ、その事は置いといて。




勇人「まずはベターに音楽室辺りか?」


香澄「音楽室ね……うん、目の付け所としては悪くないんじゃない」


勇人「ま、音楽室は怪談の舞台には定番だからな」



指折り数えて具体例を上げてみる。




勇人「ベートーベンの肖像画とか、独りでに鳴り出すピアノとか………」



そんなことを話ながら音楽室の前に差し掛かったとき――――――。

















―――ぴん、ぽん、ぱん。



香澄「Σっ!?」



真っ暗な部屋の中から突如、調子外れの木琴の音が響いていた。





香澄「な……何よ、今の………」


勇人「ピアノ……じゃなく、木琴の音色だな」


香澄「嘘よ、嘘!! 私はなーんにも聞こえなかったんだから!!」




―――ぽん、ぱん、きん、こん。




真っ青になって耳を塞ぐ香澄を嘲笑うかのように、気まぐれな音色は鳴り続ける。



何かの曲を奏でているのではない。幼い子供が悪戯にキーを押しているだけのように、てんで出鱈目な音階だ。





勇人「そーいや、木琴じゃねーけどよ………ピアノの怪談話知ってるか? ある学校で、ある日、いくらキーを叩いても鳴らなくなっちまったピアノがあってな。ピアノの共鳴ボックスを開けたら、中に女の子の死体が入ってたっつー話」


香澄「Σどーーーーーして今そういうこと言うのよッ!! 私、絶っっっっっ対中入らないからね!!!!」



香澄は廊下の柱に抱きつき、断固としてそこを動くまいという構えを見せる。




勇人「香澄………」


香澄「やだやだやだやだ!! アンタ1人で行ってくればいいでしょ!!!!」


勇人「………やれやれ」




―――ぽん、かん、ぽん、ぴん、ぽん、かん、ぽん、ぱん。




木琴は相変わらず途切れ途切れに音を奏で続けている。




勇人(…………つーか―――)



勇人はドアを開いて、音楽室に入る。




◆◆◆




真っ暗な室内に目を凝らすと、グランドピアノの前にぼんやりと白い影が………
















確かに……………
























白い影「うにゅにゅ……ふぁ……」




白い人影が何やら声を発した。




人影「あれぇ? 真っ暗です…………眞子ちゃ〜ん?」



この間延びしたほえほえ声。


そして、あの出鱈目な音階外しまくりのブッ飛んだ木琴の音色…………。






勇人「―――やっぱアンタかよ。萌」



萌「その声は、勇人君ですか〜?」



勇人「一体こんな所で何やってんだ、萌…………」




近くに歩み寄ってみると、萌はなんとも怪しげな白装束姿だった。


確か卒パの出し物で、この格好で『木琴占い』とかやってたな。




萌は、床にダラリと寝転がる。パッと見、薄汚れた布の塊にしか見えない。





萌「あはは………どうやら、眞子ちゃんを待ってるうちに寝ちゃったみたいですねぇ」


勇人「Σ寝ながら木琴叩いてんのかよテメェはっ!?」



この学校の大半は一般人のはずだが、杉並といい萌といい、ブッ飛んだ奴が多い。




萌「眞子ちゃん、遅いですねぇ………今何時なんでしょう?」


勇人「眞子なら多分、本校でまだ卒パを楽しんでると思うぜ?」


萌「そうですかぁ。それじゃあ〜勇人君、また新学期に」


勇人「ああ………」


萌を見送りながら、勇人は「着替えてから行ったほうがいーんじゃねーか?」と思った。


まぁ、まだ卒パ中だからコスプレしてる奴がいても違和感はないが…………。



勇人は音楽室を出て、ドアを閉めた。





◆◆◆




勇人「香澄〜、何処に逃げた〜? 出てきなさいよ」



付属校舎の真っ暗な廊下はシン…と静まり返って、人の気配というものが全く感じられない。




勇人「おーい、香澄ぃ〜」




かすみぃ〜〜〜…………。


かすみぃ〜〜………。



かすみぃ〜……。




勇人の呼び声は廊下のあちこちで跳ね返り、残響を残しながら消えていく。


























勇人「“か弱き乙女(抱腹絶倒)”な香澄ぃ〜♪」



香澄「………いつまでそのネタを引っ張る気?」




振り向くとそこには、いつの間にか呆れ顔をした香澄が立っていた。






香澄「…………で、肝心の幽霊は?」


勇人「……俺の知り合いだったよ」



勇人は手短に要約した。面識のないであろう香澄に萌のことを話して賛同を得られるかどうか。


案の定、そんな人がいるなんて信じられない、と言いたげな、何処か蔑むような視線を向けてくる香澄。




勇人「………ま、次行くか」



香澄「はぁ………類友ってやつの具体例ね」



あからさまに馬鹿にした目で肩を竦めてみせる香澄。



勇人「るせーよ」



香澄「………そりゃそうよね。あの子があんなヘッタクソな訳、ないもの」




廊下を歩きながら、香澄は小声で呟いた。







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